第3話 ダメ押しと追い打ち。

 

 

 そしてよっつめといつつめ。この2つは確実だろうから後回しにしていたんだけど……。


 よっつめ、あまりお腹が空かない。


 さっき泉の水面に映った私は、どう見ても子猫だった。これぐらいの大きさの頃には常に栄養を必要としているはずで、激しい空腹を覚えていてもおかしくないのに、なぜか平気なのだ。


 もっと正確に言うならば、あまり食べなくても問題がないと本能で感じている。


 それはなぜか? 答えは単純で、周囲に漂う何らかのエネルギーを私の身体全体で吸収している感覚があるから。


 これね……。さっきからフワフワと光のみたいなものが見えちゃってて、それが泉の湧き出る辺りから流れ出てきてるんだ。湖とかの水面を朝もやが漂っているような感じで。


 そのもやを私の身体が空気清浄機よろしく吸い込んでいるのが知覚として伝わってくる。それに関連しての――


 いつつめ、見えないはずのものが視える。


 私がどういう姿になっているのかを確かめるべく泉へ近寄りつつ、水中から変なのが襲ってきやしないかと睨みつけるように覗いていた時、ふいに胸元の辺りから全身に暖かな何かがブワッと巡って、それが目元のあたりへ集中したなと思った瞬間に、それまでぼや~っと揺らめいて見えていた水中の様子が急に鮮明になり、まるで水中カメラで撮っているかのように水の底にある小さな石ころの色形までもがくっきりと見分けられるようになってしまったのだ。


 今もそうだけど、私のいる場所から軽く数十メートルは離れたところにいるカラフルな鳥。少し意識すれば即座にピントが合って瞬時にズーム、真っ赤な飾り羽の毛並み一本一本までバッチリ視えている。


 そう、本来猫には認識しづらいはずの赤色が子猫な見た目の私には視えているのだ。


 猫というのは早朝や日没後の薄暗い時間帯に獲物を狩って生活していた動物で、その視覚は動きに強い暗視カメラのようなもの。全体的に色がくすんで見え、特に赤色系統は薄桃色ぐらいにしか感じられないんだとか。


 確かに、私の意識が覚醒したばかりの頃はそんな感じの色褪せた見え方をしていた気がする。ということは、それが猫(?)である今の私本来のの性能だったわけで。


 私がもっとよく見たいと望み、それを汲み取ってなにかしらのチカラが発動して、本来の視覚に補正――というか大幅な強化を掛けた。


 そう考えると、すべての辻褄がガッツリと合っちゃうんだよなぁ……。

 

 

 

 

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