第8話 二番目とデートに行った

 俺は待ち合わせ場所の映画館入り口付近でスマホを触りながら蓮見が来るのを待っていた。


 蓮見は『家を出てから帰るまでが練習だよ』と修学旅行みたいなことをいうので、定番である『今来たところだよ』というセリフを言ってやろうと待ち合わせ時間の一時間も前からここに立ってスマホを触っている。


 ただの練習だということは重々承知している俺ではあるが、それでもクラスで二番目に可愛い女子と出かけるのは多少テンションが上がってしまうもの。

 普段よりも少しだけオシャレをして待ち合わせ場所へとやってきた。


 それから三十分程スマホをいじりながら蓮見の到着を待ち、集合時間の三十分前に蓮見は集合場所へと到着した


「おまたせっ。結構待った?」

「いや、今来た……っ」


 お決まりのセリフを言いかけて俺は思わず口の動きを止めてしまう。


 私服姿の蓮見があまりにも可愛いのだ。

 学生服で過ごしている姿しか見たことがないので、私服姿の蓮見に思わず見惚れてしまう。


「どうしたの? 実は今来たばっかじゃなくて私とのデートが楽しみすぎて一時間も前に到着しちゃったとか?」


 え、何で全部分かってるの怖い。


 もしかして蓮見も一時間前には到着してて僕のことを監視してたとか⁉︎


 いや、流石にそれはないか。


「そ、そんなわけないだろ。今来たばっかりだ」

「よくできました。今日は予行演習なんだから、しっかりしてよねダーリンっ」


 蓮見は楽しそうに笑いながら僕の背中をポンっと叩いた。


 冗談とはいえ、女子からダーリンと呼ばれれば多少恥ずかしさもある。

 いやまあ実際彼氏のことをダーリンっていう女子なんて昨今存在していないだろうけど。


「それで、今日はなんの映画見んの?」

「私この映画がみたい」


 蓮見が指差したのはここ最近で急激に人気になり、映画化を果たした「ラブコメがしたいっ」というアニメ映画だった。


「……は? こんなので良いの?」

「蓮見君が嫌じゃなければ」


 ラブコメを読んで恋愛マスターになった程のラブコメ好きである俺が「ラブコメがしたいっ」を見たくないわけもない。


「嫌というよりむしろ嬉しいんだけど……」

「それじゃあ決定だね。じゃあ席は後ろの方で〜」


 そういいながら発券機のタッチパネルを操作してチケットの購入を進める蓮見。


 蓮見はアニメの映画とか好きなのか? 

  とてもじゃないがアニメが好きそうには思えないんだが……。


 --あ、なるほど。


 蓮見の好きな奴っていうのがアニメ好きなんだなきっと。


 アニメ好きとは言っても最近ではオタクのような熱烈なファンではなくてもアニメを見る時代。


 蓮見の好きな人がアニメを好きなことに違和感はない。


「楽しみだね」

「あっ、ああ……」


 そう言って僕の顔を覗き込んでくる蓮見を不覚にも、可愛いと思ってしまう自分をぶん殴ってやりたかった。

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