第6話 友達になった

 自分でもそんなことをするべきではないと理解しているのにもかかわらず、俺は蓮見に嘘のアドバイスをしてしまった。


 これじゃあ同じことの繰り返しじゃないか……。


 それに手料理を振る舞っているくらいなのだから、とっくの昔に好きな人の連絡先なんて手に入れているはず。


「あーなるほど‼︎ 確かに、手料理を振る舞ってるのにまだ連絡先知らないなんて変だよね〜」


 ……どうやら蓮見はまだ好きな相手の連絡先を知らないらしい。


「なんでまだ連絡先知らないんだよ。どうやって家に誘ったんだ?」

「え? そりゃ直接に決まってるじゃん」


 となるとやはり、好きな人は同じ高校の生徒なのだろうか。


 それとも習い事で知り合った同級生とか……。


「順番は大事だからな。順番すっ飛ばして急に変なことすると引かれて嫌われかねないから気を付けろよ」

「そうだよね。連絡先も知らないのに私さっきキスとか言ってたもんね〜。じゃあまた今度、とりあえず連絡先聞いてくるよ」


(ふぅ……。なんとか蓮見が好きな人とデートに行くのは防げたみたいだな)


 ……え?


 今俺、防ぐって考えたか?


 蓮見に好きな人とデートに行ってほしくなかったのか?


 そんなことを考えてしまうのは俺が蓮見のことを好きな場合だけ。


 ……いや、きっとこれは自分が失恋したことによる妬みだ。

 間違っても俺が蓮見のことが気になっているとかそういうのではない。


「早めに聞いてこいよ」

「分かった分かった。じゃあとりあえず、旭日君の連絡先も教えてもらっていい?」

「え、俺の連絡先?」

「うん。だってこの先学校だけじゃなくて、Rineとかでも色々と相談させてもらうことあるだろうし」


 蓮見の言っていることには何も違和感はないし、当たり前のことだと思うが、今好きな人に連絡先を早めに聞いてこいとアドバイスをして、その後すぐに俺に連絡先を聞かれれば勘違いしてしまいそうになるのも無理はないのではないだろうか。


 手料理の件といい今回の件といい、蓮見には天性の男たらしグセがあるのかもしれない。


「分かったよ。何か相談事があればいつでもRineしてきてくれ」

「ありがとっ。てか旭日君と喋ってるのちょー心地いいから、多分恋愛相談以外でもくだらないRineとかすると思うけど、相手よろしくね」

「え、いや、俺はただ恋愛相談を受けてるだけだから普通のRineとかは……」

「恋愛相談してるだけなの? もう私たち、友達でしょ?」


 そう言って俺を見つめる蓮見は友達を見ている目ではなく、あたかも好きな人を見ているような、そんなキラキラと輝いた目をしていた。


「……そうだな」


 今考えてみれば、三鼓とも俺は友達ではなく、ただの恋愛相談相手でしかなかったのかもしれない。


 しかし、蓮見とはただの恋愛相談相手ではなく友達になれた。


 友達になったからにはこれ以上蓮見に嘘のアドバイスをするわけにはいかない。


 俺の恋愛は終わりを迎えてしまったが、蓮見の恋愛は上手くいくよう全力を尽くそう。

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