第49話 深夜の魔物討伐③

「お、おい! 空から誰かが落ちてくるぞ!」



 魔物討伐をしていた騎士の1人が何かに気づいて大声をあげると、その場にいた騎士全員が魔物の群れから距離を取った。

 その瞬間、群れの真ん中から轟音が辺り一帯に響き渡り、それと同時に巻き上げられた大量の落ち葉が騎士達に襲い掛かった。



「うわっ!」



 いきなり、どうしたんだ!?


 突如して襲ってきた爆風と砂ぼこりに、メストは思わず片手で顔を覆い隠した。

 すると、近くにいたシトリンが視界を確保しようと風の中級魔法を唱えた。



「《トルネード》」



 冷静に風魔法を放っていたシトリンを見て、周囲にいた風魔法を得意とする騎士達も、シトリンに倣って風魔法を放った。

 そうして、シトリン達によって閉ざされた視界が開けると、群れの真ん中で銀色の細長い刀身が、中型の魔物の頭を真っ直ぐ貫いていた。



「っ!? あいつは!?」

「うん、どうやら僕たちが知っている人物で間違いなさそうなだね」



 どうして、彼がここにいるんだ?


 突然の木こりの登場にメストは啞然とし、シトリンは厳しい表情をしていた。

 そして、メストと同じように啞然とした表情をしていた騎士達より先に立ち直った魔物達は、突如として降ってきた木こりを視界に入れると一斉に襲い掛かった。



「全く、少しは学習されては?」



 小さく肩を竦めた木こりは、無表情のまま魔物達の猛攻を軽々と躱しつつ的確に急所を突き、襲ってくる魔物達を次々と起き上がらせなくした。



「彼は一体、何者なんですか……って、感心している場合ではありませんね」



 群れの真ん中に飛び込んだ木こりの戦いぶりを群れから少し離れたところで見ていたグレアは、軽く頭を振るとすぐさま鞘から片手剣を取り出して呆然としている騎士達に命令を下した。



「さぁ、私たちも騎士としての務めを果たしますよ!!」



 副団長の叱咤にようやく立ち直った騎士達は、遅れた分を取り返すように魔物討伐を再開した。





 あいつ、本当に一体何者なんだ?


 部下や他の騎士達と共に魔物討伐をしつつも視界に入ってくる木こりの戦いぶりに、メストはグレアと同じように感心しつつも心のどこかで疑問を覚えた。



「メスト、そっちに大型の魔物が行ったよ」

「分かった!」



 そんな中、相棒の言葉に気づいたメストは、意識を木こりから大型の魔物に移すと、すぐさま手のひらを魔物の方に向けて魔法陣を展開した。


 とりあえず、ここにいる魔物達を全て片付けてからだな。


 そう心の中で決めたメストは、目の前にきた魔物に氷の中級魔法を放った。



「《アイシクルランス》!」



 猛突してきた二足歩行の大型の魔物を氷の槍で貫くと、そのまま魔物を氷漬けにしたメストは片手剣で氷の柱を横一直に割った。



「さすが、史上最年少で騎士団の一部隊を任された男だね」

「うるさい、さっさと行くぞ」

「はいはい」



 男たちの野太い声と爆発音が辺り一帯を支配している中でも飄々としている相棒に小さく溜息をついたメストは、横から飛び込んできた小型の魔物の首を刎ねた。


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