第17話 騎士達から見た木こり
「隊長、あの平民は一体何なんですか!? 騎士に対してあんなことを言うなんて!」
木こりが立ち去り、メストの指示で部下達がリースタを連行した後、メストとシトリン巡回に戻った。
すると、2人の後を追いかけてきたラピスが、突然食って掛かってきた。
「その前に、どうしてついてきた? お前、さっき巡回は終わったって言ってなかったか? 他の奴らと一緒に騎士団に戻っても良かったんだぞ」
「それは、お2人からあの失礼な平民について聞くようにアイツらから言われたからです!」
騎士学校を主席で卒業してすぐ、メストとシトリンに憧れて辺境の王国騎士団に入団したラピスは、憧れの騎士であり上司であるメストに対して無礼を働いた木こりに心底腹が立っていた。
(全く、騎士団に帰れば話してやるのに……わざわざ、巡回中の上司を捕まえて聞くことでもないだろうが)
真面目なラピスを唆して先に戻った部下達に、大きく溜息をついたメストは、街の様子に目を光らせながら木こりについて話し始めた。
「あの人は、リースタの横暴を止めてくれた張本人だ。騎士としてはとても情けないことだが、彼の活躍が無ければ確実に死人が出ていた」
「そっ、そんな……」
「まぁ、少なくともリースタが最初に絡んだあの平民の男は確実に命を落としていただろうな」
(本当、情けない話であるが)
メストの話を聞いてラピスが啞然としていると、突然シトリンがメストに鋭い目を向けた。
「それよりもメスト、さっき彼に何を聞こうとしたの?」
いつも飄々としてメストをおちょくるのが日課のシトリンからの鋭い視線と問いに、一瞬頬を引き攣らせたメストが小さく息を吐くと白状するように口を開いた。
「あれは、彼の身のこなしについて聞きたかったんだ。王都勤めで、一応訓練を受けている騎士の攻撃を、平民でしかない彼がいとも簡単に躱していたから」
(それも、強化魔法で身体能力が上がり、下級騎士でも一発食らうような攻撃を余裕で躱していた)
「確かに、リースタの攻撃を『単調』って言ってあっさりと躱していたね。メストもリースタを止めることを忘れて彼の回避技に見惚れいたし」
「ちっ、違う! 俺はちゃんと2人の動向を見つつ周囲の人達を安全な場所まで誘導していた! それに……」
「それに?」
(『躱し方がまるでダンスを踊っているようで、品があって美しかった』なんて言えるわけがないだろうが!)
「隊長、黙ってないで言いたいことがあるならどうぞ?」
「っ!!」
(こっ、こいつ……!)
ニヤニヤと見てくるシトリンにメストが軽く睨みつけると、不意にレイピアに魔力を纏わせてリースタの攻撃を受け止めた時の木こりの姿が脳裏に蘇った。
「彼がレイピアに纏わせていた魔力についても聞きたかったんだ」
「っ! メスト、それって……」
「あぁ、魔法陣は出していなかったが、彼はリースタが放った魔法を打ち消していた。ということは、ほぼ間違い無いだろう」
(彼が屋根伝いに走っているところを見た時に思っていたことだが……魔力を纏わせたレイピアでリースタの放った魔法を打ち消した時に確信した)
シトリンの言葉に軽く頷いたメストが、険しい顔をしたまま視線を前に戻す。
「あれは、魔法だ。それも、俺たちも知らない魔法……恐らく、非属性の闇魔法の可能性が高い」
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