第6話

 目を開けると昭和感満載の古びた遊園地の入り口にいた。移動のたびにみぞおちを殴られるのか?瞬間移動は便利だけど痛い。


「おじさん、早く入場券買ってよー」


「どうせ瞬間移動するなら、園内に移動したほうが入場券を買わなくて済むんじゃないの?」


「そんな風にセコいから、いつまでたっても冴えない独り者……いいわよ、どうしてもって言うなら、みぞおちを勢いよく殴ってあげるけど……」


 本気で痛いからやめてくれ。入場券を買います。


「わーい、ありがとう!」


 遊園地にメイド服、これは意外としっくり溶け込んで、今度は居心地が良い。


「あっちだよ!」


 葉子は観覧車を指さすと早く早くと俺の手を引っ張った。


 こ、これは……おじさん、女子高生と手を繋いでます。


「うん?嬉しいの?」


 い、いや……うん、ちょっと嬉しい。


 昔ながらの遊園地、平日だから人も少ない。しなびた雰囲気がおっさんの俺を落ち着かせる。


 入場券とは別に乗り物券を買って係員に渡し観覧車に乗り込んだ。


「なにしてんの?」


「え?」


「こっちに座りなさいよ!向かい合ってどうすんのよ!」


 言われた通り葉子の隣に座った。葉子は俺に肩を寄せると上目遣いで瞳を潤ませた。


「おじさん……」


 これは!このシチュエーションはキスする流れのやつだよね!


「エロいこと考えてるでしょ」


「いやいや、考えてねーよ」


 慌てる俺を見ながら楽しそうに葉子は言った。


「へーん、手玉にとってやった」


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