第5話

「で?葉子はどこに行きたいんだ?」


「女子高生とおじさんのデートよ、行くとこなんて決まってるでしょ?」


 悪戯っぽく笑いながら葉子は俺の目を上目遣いでじっと見つめた。女子高生とデートなんて考えたことも無いからなぁ……どこだろう?


「あっ、今またエロいことを考えたでしょ」


 葉子は胸を手で覆い隠した。エロいことなんか考えてねーよ。


「とりあえず外に出るわよ」


 そう言うと葉子は俺のみぞおちを勢いよくグーで殴った。


「うっ」


 あまりの痛さに瞑った目を開けると病院の外にいた。なにこれ?瞬間移動したのか?


「まずは喫茶店、ひとつの飲み物に2本のストローをさして向かい合って飲みたいの」


 やだ、それ恥ずかしい。


 葉子のリクエストで俺たちは昭和感満載の純喫茶に入った。落ち着いた雰囲気の店内にメイド服姿の女子高生を連れたおっさんが入ってきたものだから、店内がざわついた。


 不審げな表情の店員に、他のお客さんから離れた席に案内された。


「ご注文は?」


 店員はジロジロと俺を見ながら聞いた。


「じゃあおじさん、注文して!」


 え?俺が注文するの?やだよ、恥ずかしい。


「おじさんの飲みたいものでいいよ~」


 わかってるよね?という表情で葉子は上目遣いに俺を見た。かわいい。わかりました。


「メロンソーダをひとつ。ストローは2本お願いします」


 店員は蔑むような目で俺を見ると大きな声で復唱した。


「メロンソーダひとつにストロー2本ですね」


 せっかく他のお客さんから離れた場所なのにまる聞こえだ、恥ずかしい。


 ほどなくストローが2本ささったメロンソーダが運ばれてきた。


 店員は相変わらず俺を蔑むような目で見ながら言った。


「メロンソーダひとつにストロー2本、ご注文の品はお揃いでしょうか」


 恥ずかしいから大きな声で言わないでください。


「さあおじさん、ストローに口をつけて見つめ合うのよ」


 言われた通りにすると、葉子は瞳を潤ませながら顔を赤らめた。そんな表情されたらますます恥ずかしいだろうがよ。先に言ってやる。


「なに照れてんだよ」


「う、うるさいっ」


 ズ、ズズズズ。葉子は一息でメロンソーダを全部吸い込んだ。


「あああ、俺のメロンソーダ」


「へーん、手玉にとってやった。さあ次は遊園地よ!」


 喫茶店の外に出ると、葉子はまたもや俺のみぞおちを勢いよくグーで殴った。


「はうっ」

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