第4話

 俺の置かれている状況を整理すると、交通事故に遭って生死の境をさまよっているけれど幽体離脱中。そして今からこの子とデートしなきゃならないってことだ。


 それにしても気になるのはこの女の子のことだ。


「お前は一体何者なんだ?俺と同じで幽体離脱中なのか?」


「違うよ」


 女の子の表情が曇った。それはとても悲しそうな表情だった


「私は葉子ようこ、幽霊よ。生きてるときはナウい女子高生だったんだけどね、色々あって今は現役女子幽霊よ。この世に未練が有るから成仏出来ずにさまよってるの」


 ナウいって久し振りに聞いた。いや、そんなことより、いきなり重たい話が来たぞ。


「色々あったって?何があったんだ?」


「色々は色々よ……これから楽しくデートしようって時にそれ聞くの?そんなだからおじさんはいつまでたっても冴えない独り者なのよ」


 鋭いご指摘、ごもっともです。


「じゃあ、この世に未練っていうのは?」


「冴えないおじさんを手玉にとること!」


 いちいち腹立たしいやつだ。


「なんで俺がレンタル契約のターゲットになったんだ?」


「あの雑踏の中で、ピカイチだったからよ」


 え、そうなの?あの雑踏の中で俺が一番光り輝いていたの?


「なに照れてんのよ。おじさんがピカイチにしょぼくれてたのよ。だからすぐに大喜びで私をレンタルしてくれるって思ったの」


 おい、ピカイチの使い方間違ってるぞ。


 でもこの歳になって女子高生とデートするのも悪くはないか。相手は幽霊だけど……さらに言うなら俺は幽体離脱中だけど。


「わかったよ。じゃあ今から1日、お前をレンタルしてデートしてやるよ」


「お前って言うな。葉子って呼べ」


 確かに名前で呼び合うほうがデートっぽいな。


「わかった、俺の名前は……」


「あ、それ要らない。おじさんって呼ぶから。あとデートしてやるってなによ?私は女子高生よ。デートさせていただきます、でしょ?」


 面倒くさいから俺は素直に答えた。


「はい、デートさせていただきます」


「よろしい、そうと決まれば善は急げ、行くわよ!」


 デートをすると決まった以上、楽しんでやる。


「おう!」


 俺はうっかり立ち上がって、天井裏の低い天井におもいっきり頭をぶつけた。


いてえっ」


 幽体離脱中なのにやっぱり痛い。


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