第2話
「ここはどこだ?」
気が付くと俺はしゃがんでいるのがやっとの狭くて暗い場所にいた。目の前にはさっきの女の子がいる。
「ここから下を見てくださーい」
女の子が指差したのは排水口のような四角くて小さな穴、何本かのスリットが入っている。
言われた通りに下を覗くと、そこは病室だった。なるほど、ここは天井裏で通気口から下を見てるってわけだ。
「よーく見てください」
よーく見ると病床に横たわっているのは……どう見ても俺だ。これは一体どういうことだ?
横たわっている俺は医療機器に囲まれて、そこからたくさんの管が身体に向かって伸びている。
「ここはICU(集中治療室)じゃないか、あれは俺か?いや待て、俺は今ここに居るよな、じゃああれは誰だ?」
女の子はじっと下を眺めて言った。
「I see you.です」
「は?」
「ICUとI see you.で駄洒落てみました!」
「さっさと説明しろっ!」
「重大な事実をお知らせする前に駄洒落で雰囲気を和ましただけですよ。I see you.私はあなたを見ている。つまりベッドで寝てるのはおじさんです」
どういうことだ?混乱している俺に女の子は続けた。
「横断歩道でいきなり私に抱き付いたおじさんは、天罰が下ってバイクにぶち当たり病院に運ばれ、ベッドの上で生死の境をさまよっています。そして私の目の前にいるおじさんは幽体離脱した状態のおじさんです」
本来なら、ああそうですかと納得出来るわけの無い状況なんだが、さっきからおかしなことに巻き込まれている俺は、すんなりと納得してしまった。
「ああそうですか……」
幽体離脱して病床の自分を上から眺める、よく聞く話だ。現状は理解したものの、そもそもこいつに声をかけられなかったら、俺はこんな目には遭っていないはずだ。そこは納得いかない。
「なにを言ってるんですか、あそこで私が声をかけなかったら、おじさんは横断歩道を渡り終えた直後に、暴走自転車に跳ねられて死ぬところだったんですよ。つまり、生死の境をさまよっている今のほうがマシって事です!でもねぇあの時、おじさんがレンタルを嫌がって時間をかけたりしなかったらこんな事には……」
女の子はまたもや胸元から目薬を取り出した。
「泣き真似はもういいよ。それで?どうなるんだ俺は?」
「どうなるって……」
女の子は胸元からICレコーダーを取り出し音声を再生した。
『契約するからさっさと起きろ』
「口約束でも契約は成立です!というわけで、契約を履行してもらいます!」
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