第3話 未来へ

ここはどこだろう。

目を開く、まだはっきりとは見えない世界の中を私は手探りで生きる。


手を伸ばす。温かな何かに触れる。握りかえす手。柔らかなぬくもり。


ふわりとした感覚に包まれる。そのまま高く持ち上げられ、ゆらゆら、ゆらゆらと揺れる。


私が何か声を発すれば、驚いたような嬉しそうな声を上げる。


何度も、何度も、繰り返し、私の姿を収める日々。


紗那、紗那と私を呼ぶ声が聞こえる。懸命に、2人の方を向く。


毎日が幸せなんだと父は言った。そうだね、と母は笑った。



ただ、それだけで良かった。

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人として 秋穂碧 @aioaoi

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