第20話 作戦

 翌日、僕たちは洞窟に向かった。


 洞窟はすぐ見つかって、全員で中に入った。

 

 洞窟の中は薄暗かったけど、ミオが照明ライトニングの魔法を灯してくれたおかげで、中はよく見えるようになった。

 

 どうやら、洞窟の中は何かの施設になっていた。

 

 洞窟の奥は人為的に整備された空間になっていて、大型の魔導機械のような物があちこちに置かれている。


 かなり前に廃棄されたみたいで、装置には蔦が絡み合い、錆だらけで、今はもう動きそうもない。


「ここは……」


「おそらく、遺跡だろう。千年前に使われてた魔導科学の実験施設か何かだろう」


 ワタルさんは、辺りを見回しながら言った。


 施設の中は通路と小部屋の組み合わせになっている。


 人は誰もいなくて、代わりにモンスターが大量に住み着いていた。

 

 戦闘になると、ワタルさんとカエデさんは……強かった。

 

 洞窟にいるモンスターの攻撃は、全てワタルさんが受け止めてくれる。

 

 カエデさんは音もなく動き、背後から急所を突いてモンスターを一撃で仕留めて行く。

 

 僕たちの出番はほとんどないまま、洞窟の奥へと進む事ができた。

 

 ほどなくして、狭い通路を抜けると大きな空洞に出た。

 

 奥には剣が床に突き刺さっている。

 

「あれは……」


「おそらく、アレこそが探し求めていたアーティファクト。魔剣ルクス・リアだろう」


「ついに見つけましたね」


 喜んで抜きに行こうと駆け出す僕を、ワタルさんは手で制した。

 

「まて……ハル君」


「何でですか」


「アレをみてみろ」


「あ、あれは……」


 剣の後ろ、暗がりになっていたけどよく見るとモンスターがいた。

 巨大な、蛇の形をしたモンスターがとぐろをまいている。

 

大蛇サーペンスか、やっかいな相手だな」


 ワタルさんは、モンスターを見据えながら独りごちる。 


「私が、行く」


 カエデさんの姿が消えた。

 

 一瞬でカエデさんはモンスター、大蛇サーペンスの所まで瞬間移動していた。

 苦無を抜き、蛇に斬りつける。

 

 だけど、カエデさんの攻撃は傷一つ付けられない。

 

 再び瞬間移動して、戻ってくるカエデさん。

 

「ダメ。鱗が硬すぎて、攻撃が通らない」


大蛇サーペンス相手に物理攻撃ではダメだ……魔法が使えれば良いのだが……」


 ワタルさんは困惑している。

 

 この中で、ちゃんとした魔法が使えるのはミオだけだ。

 しかし、ミオが使えるのは強化魔法と回復魔法。

 攻撃魔法は得意じゃない。

 

 僕はもちろん、まだちゃんと魔法が使えない。

 

 アレを倒すには、どうすればいいだろう……

 

 その時、ワタルさんは何か閃いたようだ。

 

「ハル君、あの大きな蛇サーペンスを倒すには、物理攻撃では無理だ。鱗が硬すぎる。かと言って、今のメンバーに魔法攻撃が得意な者はいない。そうだね」


「そうですけど……」


「だったら、硬い鱗のある外側からではなく、内側から攻撃してみてはどうだろう」


「たしかに、内側にはうろこはないでしょうけど……そんな事ができるんですか?」


「ああ。一つアイデアがあるんだ」


「それは?」


「ハル君も俺も、地球テルースからの転生者だ。だからハル君にはわかるんじゃないか?。日本の神話にも、大蛇サーペンスに似た神を倒すという言い伝えがあるだろう?」


「……あ、あります!」


「それで行こう!」


 僕とワタルさんは同時に頷いた。


「カエデ、頼めるか。合図をしたら、あの大蛇サーペンスの体内に飛び込んでこれで中から奴の腹を切り裂いてくれ」


 ワタルさんは、腰に刺していた両手剣ショートソードをカエデさんに渡す。


「……いいけど。簡単には入れそうにないわ」


「俺たちが隙を作るさ」


「わかった。合図を待つわ」


 ワタルさんは背嚢ナップサックから小瓶をいつくか取り出した。

 僕は瓶を幾つか受け取り、栓を開けて行く。


 ワタルさんも栓を開け、僕たちは小瓶を抱えたまま大蛇サーペンスに向かって突撃した。

 

 モンスターがこちらに気がついて、口を大きく開けて威嚇した。

 

 大蛇サーペンスの口からは、大きな牙が生えている。

 あれに刺されたら、一撃で串刺しになりそうだ。

 

 

 だが、そうはならない。

 

 僕らは抱えていた小瓶を次々と、モンスターの口の中に放り込む。


 大蛇サーペンスは、僕たちが投げた小瓶を飲み込んだ。

 瓶の中に入っているのは、ウスキー『ヘイズルーン』だ。

 

 モンスターは一度に体内にウスキー入りの瓶を飲み込んだ。

 やがて、大蛇サーペンスの様子がおかしくなっていった。


 頭がフラフラと揺れている。


 酔っ払ってきたんだ。

 

「今だカエデ。頼む」

 

 ワタルさんの合図と共にカエデさんの姿が消える。


 次の瞬間、大蛇サーペンスの体内から両手剣ショートソードが現れて、大蛇サーペンスの体を切り裂いた。

 


 切り裂かれた大蛇サーペンスは苦悶するように悶え苦しみ、倒れた。


 さらに腹が切り裂かれ、大蛇サーペンスの腹の中から、何事もないようにすんとしたカエデさんが出てきた。

 

「やったな。作戦成功だ!」


 僕たちは、大蛇サーペンスを倒した。

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