第17話 仲間

 僕たちを助けてくれたのは、杣矢そまやわたるさん、薙辻なぎつじかえでさんという冒険者の男女だった。

 

 二人とも僕たちより一回りほど上の年齢のようだ。

 

 そして、二人とも転生者だった。


 ワタルさんは、短めに切り揃えてさっぱりした銀色の髪をしている。

 瞳の色は澄んだ青い色ブルーだ。


 そして金属の胸当てプレートメイルを着込み、腰には鞘に納めた片手剣ショートソードを差している。

 

「俺たちも、アーティファクトを求めてこの島に来たんだ。君たちもそうなんだろう、では、ここからは一緒に行動してはどうだろう」


 ワタルさんは僕たちに提案した。

 命を助けてもらった僕に、断る理由はなかった。

 

「こちらこそ、お願いします。でも……」


 それには懸念が一つある。

 

「わかっている。アーティファクトの所有権だね」


「はい」


 そう、一緒に行動するとして、アーティファクトはおそらく一つ。

 見つけた後でどちらが手に入れることになるのか、それが問題だ。

 

「君たちはまだ、使ったことがなさそうだね。では先輩冒険者である俺から説明しよう。一つしかない宝物を複数パーティで取り合う時、僕らは〝ロット〟という魔法を使うんだ」


「ロット……ですか……」


「実際に見せた方が早いだろうね」


 ワタルさんはそう言うと、片手を前に差し出した。

 手のひらを上に向けている。

 

「ロットイン」


 ワタルさんがそう言うと、手のひらの上に半透明な賽子さいころが現れた。

 

「まさか……これで……」

 

「そう、そのまさかだよ。賽の目は6つ。僕らは2パーティだから、お互い偶数か奇数のどちらかを選ぶんだ。そして当てた方が、アーティファクトをいただく。この魔法は、完全にランダムに抽選が行われるから、文句は無しだ」



「そんな魔法があったなんて、知りませんでした」


「ちなみに、この魔法はギルドが開発したもので、ロットの結果は即座にギルドに通知され、戦利品の持ち主が確定される。後から力ずくで奪ったりすると、ギルドのブラックリストに載る事になるぞ」


「そ、それだけは嫌ですね」


「どうだい?これなら安心して組めるだろう」


「わかりました。もとより、提案には賛成ですし、これからよろしくお願いします。いいよねミオ」


 ミオは大きく頷く。


「もちろんよ。ハルを助けてくれた恩人だし、とても心強いわ。ぜひお願いします」


「決まりだな、では、まずお互いに自己紹介といこうか」


 僕たちは、ワタルさんにこれまでの経緯をかいつまんで説明した。

 

 ワタルさんも、僕たちに色々教えてくれた。

 

 ——ワタルさんは、転生する前は営業マンをやっていたらしい。


 営業成績も良くて、がむしゃらに働いて、家族もできて、順風満帆に行くと思っていたのに、不意の事故で家族を残して死んでしまったらしい。

 

 この世界に転生してからは、持ち前の交渉術を活かして商売をやっていたらしい。


 でも、ある時冒険者の人と出逢い、そのカッコ良さに憧れて自分も冒険者になろうと決意したらしい。

 


 カエデさんは、髪は艶のある黒い色を首元でばっさりカットした、長めのボブカットで、瞳は暗めのダークブラウンだ。


 カエデさんは、全身黒ずくめの忍者の様な服を着て、口元はやはり忍者の様に布で隠している。



 カエデさんは、黙ったままで、自分の事を語るのは苦手そうだった。


 でも、ある時ワタルさんと出会って、二人は一緒に行動するようになったんだそうだ。

 

 二人とも、僕よりずっと人生経験を積んできていた。

 

 因みに、カエデさんがあまり喋らないのは、どうやらアサシンだからみたいだ。

 そう、決して作者の手抜きじゃない。


 僕とミオも、ワタルさんとカエデさんにこれまでの経緯をかいつまんで話した。


 僕はジャッ◯・バウワーの真似をしながら先週までのあらすじを語るように回想してみたんだけど、誰も笑ってくれなかった。


 この中でトゥエン◯ィフォーを見ているのは、どうやら僕だけだったらしい。


「よし、お互い、自己紹介も済んだ事だし、そろそろ出発しよう」

 

 ワタルさんは爽やかな笑顔で、僕らを見回した。


「でも、どこに向かえばいいんでしょう。アーティファクトの在処を闇雲に探すしかないんでしょうか」


「いや……心当たりがある」


 ワタルさんがカエデさんの方を見ると、カエデさんは軽く頷いた。


 それを見て、ワタルさんは再び話し始めた。


「実は、ここに来る途中、小さな山の麓に怪しげな洞窟がある事に気がついたんだ」


 洞窟……たしかに何かありそうな感じがする。

 

「だけど、中には何が潜んでいるのか分からない。さっきのロボットみたいに、精神攻撃を仕掛けてくる敵もいるかもしれない。どんな攻撃をしてくるかわからないから、用心して進みたい」


「そうですね……」


僕は一瞬、裸のミオを思い出して、慌てて頭を振った。


隣のミオに、怪訝そうな目でみられたけど、仕方ない。

精神攻撃は僕のせいじゃない。



「今日はもう遅い。一旦、この辺りで野営をして、明日、明るくなってから洞窟を進もう」


 ふと気がつくと、辺りはかなり暗くなってきていた。


 森の中は元々暗いから、もう少ししたら、すぐ真っ暗になりそうだ。

 

 たしかに、このまま進むのは危険そうだ。


「そうですね」


 僕たちは、この森で一晩過ごす事にした。

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