第8話 ミオ
バー『トレボーン』に、新しいオーナー、ミオがやって来て、もうすぐ1ヶ月になろうとしていた。
「オーナー、ちょっと良いかな?」
ミオはリュウさんの娘だ。
「ん?何?どうかした?」
彼女は先日、ルクネリア皇国から帰ってきたばかりだった。
「今日届いたこれ、いったい何かな?」
ルクネリア皇国は、ウィザリス王国の隣国であり、同盟国なのだそうだ。
「何って、仕入れだよー。お店で出すね」
新オーナーは僕より二つほど若いけれど、一応オーナーと言う事で、僕はなるべく敬語で話す事に決めた。
「僕の目にはどう見ても
でも、敬語で話すのはやめた。その方が仲良くなれる気がしたから。
ミオは、いいよ私もハルの事タメ口するねと言ってくれた。
「そ、いいでしょ。ルクネリアのホストクラブでよくやってたんだー」
実際仲良くはなってきた気がする。
それにミオは、見た目とても可愛い。
「あのね……うちは普通のバーだから。ホストクラブでもキャバクラでもないから」
彼女は、転生者であるリュウさんと異世界の女性とのハーフだった。
顔は小柄、髪は
「えー、やらないのーシャンパンタワー……」
服も、お洒落で女の子らしい、可愛らしい物をよく着ているし、アクセサリーもお洒落に身に着けていて、基本的に地味な僕とは、正反対ではある。
「さ、仕入れ先に、返して来ようか」
とはいえ、ミオは見た目とても可愛いんだけど、そんな見た目に騙されてはいけない。
「いーじゃんケチー」
「あーそ、分かったよ。じゃ、この
というか、ちゃんと見ていないと、時々とんでもなく予想外の事をやらかすのだ。
「わかった返してくる!すぐ返してくるから!……ていうか私、オーナーなのに給料なの?」
ま、だけどなんとか、マスター代理の僕と新オーナーのミオ、二人で店をやりくり出来る様になって来た。
「僕はリュウさんに頼まれてるからね。ミオの給料はハルが管理するようにって」
「パ……パパのばかー」
彼女は、こう見えても冒険者ライセンスを持っていた。
レベルは5……そう、僕よりレベルが上だった。
「ところでハル」
「何?」
「ハルは、どうしてこの店で働こうと思ったの?」
「ああ、その事……色々あって、リュウさんに拾われたんだ」
「パパに?……で、色々って?」
「少し長くなるけど、いい?」
「時間ならあるわよ。さ、話してごらん」
「僕、そのころはまだ冒険者ライセンスを持っていなくて、街の外にはモンスターがいない地域しか行く事ができなかったんだ」
「うんうん」
「でも、まだこの世界に転生してきたばかりだった僕は、そのあたりの事がよくわかっていなくて、モンスターがいるエリアに迷い込んでしまったんだ」
「あーなるほど。いるよね」
僕は、どうやって帰ればいいのか分からなくなってひたすら彷徨っていた。
そして、モンスターに出会った。
首が三つある、野犬を大きくしたようなモンスターだった。
明らかに、強そうなモンスターだった。
僕はそこで、死を覚悟した。
そこに運よく居合わせた人は、モンスターを退治して、さらに僕を安全な場所送ってくれた。
しかも、禁止エリアに入った事で僕がお咎めを受けないように、黙っていてくれた。
それがリュウさんだった。
その上、僕はリュウさんの店で雇ってもらえる事になった。
「ふーん、ハルとパパにそんな出会いがあったんだ」
「そういえばミオはレベル5なんだよね。凄いな」
「やーね。レベル5までは正直、誰でもなれるの。難しいのはその先からなの」
「そうなんだ」
「そうねー……そうだ!今度の週末にでも、一緒にモンスター出没エリアに行きましょ。ハルもライセンス取ったばかりで、戦いたくてうずうずしてるでしょ」
「うん。でも、僕はまだレベル2になったばかりで、迷惑かけちゃうかもしれないけど」
「そんな事気にしてたら、この先やってけないわ。レベル5まではチュートリアルみたいな物なんだって、パパが言ってた。だからハルは、さくっとレベル5に上がるよ」
「そ、そうなのかな」
こうして僕とミオは、二人でモンスター禁止エリアに出かける事にした。
——————あとがき——————
お読み頂きありがとうございます。
ここまでお読み頂いた方にむけて……
え、心の声……気のせいです多分。
そう多分。
さて、ようやく、メインヒロインのミオが登場しました。
ハルの冒険はまだまだ始まったばかりです。
ハルはこれから、本格的に異世界を冒険する事になるでしょう。
フェオとアンスールの再登場はあるのか、リュウさんの行方は……
時間はかかるかもしれませんが、できればなんとか頑張って完結まで導いて行けたらと思います。
気が向いたらで構いません。
これからもどうぞよろしくお願いします。
(書いてみたら思ってたより文字数稼ぎにならないのだった)
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