第4話 恥

あの後俺は5分ほど走り、家に帰ってきた。結局のところ、体力の低下或いは他の理由で合計10分しかランニングをしていない。歳だからではないと信じたいところだ。


家に着いたのちょうどお昼時。さて、昼飯は何を食べようか。まぁ正直ランニングをした後だからあまり動きたくないし簡単に済ませよう。


冷蔵庫の中には豆腐、牛乳、豚肉、人参、ネギ、じゃがいも、白菜、玉ねぎ、その他もろもろある。…そういえばどこかに麻婆豆腐の素があったな。豆腐とネギはあるけどひき肉がないな。

でももう麻婆豆腐の腹だからなー。しょうがないひき肉作るか。


ミンチをするには包丁とかフードプロセッサーを使うやり方があるが洗い物がめんどくさいから包丁を使って、存在感がでるよう大きめに切った。


麻婆豆腐の箱の裏面に記述してある方法で調理して、ものの20分で麻婆豆腐はできた。サラダなどはなく、あるのは麻婆豆腐と調理過程で温めていおいたご飯のみ。うまくでき、満足だ。そういえば勿忘は飯、何を食ってるんだろ。


———◇■◇


『あ!』


突然大きい声が聞こえ、目が覚めた。今の声は隣の部屋から聞こえた。おそらく配信でのことだろう。時刻は6時、どうやら飯を食べた後いつの間にか寝ていた。


「首痛っ」


変な体勢で寝ていたせいか首を寝違えたらしい。顔を洗い、飯を作ることにする。6時だし、勿忘は腹がすいているだろう。…あれ、なんで俺こんな餌付けみたいなことしてるんだろう。


「…」


考えないことにして、何を作れるか確認するために冷蔵庫を開く。おすそ分けがしやすそうで、かつおいしいもの。そういえばあいつはアレルギーとか何かあるのだろうか。まぁアレルギーがあるかどうか後で聞くか。


ということで作るものは無難に肉じゃがに決まった。できてから思ったが肉じゃがで飯は食えるのだろうか。…多分大丈夫だ。タッパーに詰め、隣の部屋のチャイムを鳴らした。ゴソゴソと音がした後声がした。


「…はーい」

「紅部井だ」


ガチャと扉が開く。勿忘の目が俺に向き、その後手元にあるタッパーを見つけると目がキラキラし始め、少し口元が緩んだ。


「肉じゃがだ」

「別に聞いてませんよ」


とか言いつつもより目を煌めかせている。そういえばこいつは配信をしているがどこで配信しているのだろうか。You○ubeか、○witchか。


「紅部井さん?」

「あぁ、悪い」


考え事をしていると勿忘は待ち切れなさそうに声をかけてきた。タッパーを差し出すと嬉しそうに受け取った。こんなに喜んでくれるとこちらも嬉しいものだ。


一言二言会話を挟み、部屋に戻った。俺も飯を食うことにし、さっき作った肉じゃがと即席で作った味噌汁を食べ始める。こうしていると、、日本食の偉大さに感動を覚える。


食事をしていると隣から話し声が聞こえてきて、さっきの考えていたことが浮上する。少し気になり、思わず聞き耳を立ててしまう。


『よいしょ。ただいま帰りました。』

『え?いや宅配便ですよ。彼氏とかじゃありません。』

『なんか少し声乗ってない?っていやいやいや、そんなわけないですよ。いつも通りです。』

『再開しますよ!えーと、確かこの角を…』


「…何やってんだ俺は」


女子高生の部屋の壁に耳を当て、声を聞く。やっていることはただのストーカーと何ら変わりない。こんなことがバレたら誰にも顔を向けられない。


忘れよう。うん、そうしよう。きっとそれが一番だ。今の行いに蓋を閉じるように、目を逸らすように俺は風呂へと駆け込んだ。決して逃げたわけではない。戦略的撤退(?)だ。

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隣の美少女は配信者 舞黒Glam @mychlo

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