第3話 休日
ピンポーン
…ん。チャイムが鳴り、目が覚める。時計を見ると時刻は7時。今日は月曜日だから休みの日。今日は特にすることがないからこんなに早く起きる必要は一切ない。…寝るか。
ピンポーン コンコン
…。
コンコン 「すみませーん」
…なんか最近こんなことがあったな。
「おはようございまーす」
…はぁ。
「こんな朝早くからなんだ」
「あ、おはようございます。それと平日ですよ?7時なのにまだ起きてなかったんですか?大人ってそんなものなんですか?」
扉を開けた先に立っていたのは隣の少女。昨日とは打って変わって服が違う。ブレザーを羽織り、スカートを履き、ネクタイをつけていた。美少女なだけあって随分と似合っている。今は7月だが、制服は春服なのだろうか?
「俺は今日休みだ。あと仕事でも起きるのは8時半だ」
「へー。あ、これ洗ったので、お返しします。…あと、おいしかったです」
「ふ~ん」
「…なんですか?」
昨日は散々断っておいたくせに、とかいうとさすがに起こるか。
「いやー?別に」
「なんか気に食わないですね」
「そんな気にするな、少女。ていうかお前学校は大丈夫なのか」
こいつは配信者だが、それは違う面。本業は学生だ。
「大丈夫です。いつも余裕をもって登校していますから。あと、少女じゃありません。
初めて名前を知ったなそういえば。名前も教えていないのによく料理を受け取ったなこいつ。考え事をしていると勿忘はこちらを少し睨んでいた。…ああ。
「俺は健、
———◇■◇
あの後勿忘は学校へと行った。あいつ少し口うるさいな。俺の生活はこれで完成しているんだからだらしないやら、しゃんとしらだなとかとやかく言わないでほしい。
気がつけば時刻は8時。いつもなら昼まで眠っているが、目も覚めてしまい、再び寝るのも気が向かない。いやはやどうしたものか。窓の外を見るとよく晴れている。…そういえば暫く運動してないな。少しランニングにでも行くか。
部屋着からジャージに着替え、扉を開けて外に出る。下に降りるため階段を目指し廊下を歩いていると、向かいの方から人が歩いてきた。俺の部屋の二つ隣、勿忘の一つ隣の部屋の住人だ。年齢は見た感じ30歳前半ぐらい。靴はボロボロで着ているジャージも綻びが目立つ。
「おはようございます」
「…」
挨拶をするが、返事は返ってこなかった。隣を通ると小さい声でボソボソ何かを言っている。久しぶりに顔を見たが少し怖い印象を受ける。
気を取り直してアパート前まで行き、軽いストレッチを済ませてから久々に走るワクワクを抑え切れず、俺は走り出した。
———◇■◇
「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ」
走り始めてから5分ぐらいしか経っていないがもう限界を迎え、公園のベンチに座っていた。呼吸が乱れすぎてて上手く息を吸えない。張り切りきすぎてしまった。
「ダイジョブすか?」
声がした方を見ると、そこには女子高生が立っていた。勿忘と制服が違うから違う学校だろう。喋ろうにも息が切れすぎて言葉が出ない。俺このまま死ぬんじゃないか?
「うわ、すごい汗じゃん。ちょっ待っててください。水買ってくるっす」
「はい」とありがたく渡された水を飲む。呼吸が少し落ち着き、視線を前に向ける。水を渡してくれた女子高生は制服を着崩し、金髪ショートがよく似合っていた。
「水ありがとう。いくらだった?」
「いや、それぐらいいいっすよ。それよりダイジョブなんすか?」
「うん。十分落ち着いたよ」
時折あくびを押し殺し、少し眠たそうに受けごたえをしている。時計をチラッと見ると時刻は8時10分。ここにいて大丈夫なのだろうか。
「それはなによりっす。どうしたんすか?あんな死ぬような形相してて」
「いや、実は久々にランニングしてそれではしゃぎすぎて、ペースミスって…」
「なーにやってんすか(笑)」
初対面とは思えないほどラフな感じでくる。勿忘にも負けず劣らずの美少女だから学校では大層モテるのだろう。
「君は学校は行かなくて大丈夫なのか?」
「あー…。もう遅刻確定なんで早く行っても変わらないっすね」
「いや、早く行った方がいいだろ」
清々しいのか、それともめんどくさいだけなのか遅刻してもゆっくりと行こうとしていたから早く行くことを促すと、「やっぱりそうっすよね。じゃあまた会いましょう」と言い走っていった。促したのは俺だがスカートなのだから走らない方がいいのではないか?
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