第5話 この名前は…?

急に明かりが暗くなった。

これはパーティーの始まりを表す合図。

舞台の上に立っている3人にスポットライトが当たる。

「皆さま、今夜は我がパーティーにお集まり頂き、ありがとうございます。このパーティーの主催者代表、シャレム・クアイエッセです。今夜のパーティーは弟たちにも手伝ってもらいました」

「ティレル・クアイエッセです」

「ラドミーラ・クアイエッセです」

「では、今夜のパーティーに、乾杯」

第一王子の声を合図にグラスの音が鳴る。

「姉さん、乾杯」

「アイン、乾杯」

「それにしても相変わらずの無愛想だね、王子様」

「いつものことでしょ」

ティレル様とラドミーラ様は普段は笑顔を見せない。何ならパーティーにだって絶対に出ない。なのに______

「エリーナ!」

何で私に対してはあんな笑顔で近寄ってくるの⁉︎

「久しぶり。最近会えなかったから寂しかったよ」

「お久しぶりです。ラドミーラ様。今夜はお招き頂きありがとうございます」

私は着ているドレスの端を持ちお辞儀をした。

「ラドって呼んでよ。婚約者なんだから」

私は望んでないんですけど。

「ラドミーラ様。姉さんから離れてもらってもよろしいでしょうか」

「流石にシスコンすぎじゃないか?アイン」

「どこかの王子が姉さんにべったりしなかったらこんな風にはなってなかったんですけどね」

また始まった。ラド様とアインの言い争い。

アインも懲りないわね。王子に向かってあんな態度、尊敬するわ。

「エリーナちゃ〜ん!久しぶり」

「元気そうで何よりだ、エリーナ」

「お久しぶりです。シャレム様。ティレル様」

2人の王子たちにもラド様と同じように挨拶をした。

「エリーナちゃん全然城に来ないんだもん。ラドが後ろに黒い霧出して過ごしてるから使用人たちがびびって大変だったよ〜」

「全くだ。ラド、お前はもう少し控えろ」

「兄さんたちにも婚約者が出来たら分かりますよ」

10分間王子たちと対談をして他の貴族たちの元へ行った。挨拶周りがまだだったらしい。

王子たちと別れた後、私は外の空気を吸いたくてアインに内緒でこっそり庭へ出た。

夜風が吹き、周りの花たちが揺れるように動く。風で花びらが舞い、幻想的でとても素敵だ。まるで、あの時見た桜のよう……

でも、ここにあの人はいない。前のように、隣で桜を見てはくれない。笑顔で笑いかけてはくれない。私は前を向かなければならない。なのに、なのに………

あの人の顔が忘れられなくて、胸が、苦しい。

誰か、私のこの胸の高鳴りを、抑える方法を教えて……!もう、あの人のことを忘れたいの。

思わず涙が出てきた。悲しいからだろう。何が悲しかったんだろう。

忘れられないこと。

胸が苦しいこと。

いや、理由なんてほんとは分かってる。

この現象の名前ぐらい分かってる。

けど、、分かりたくない。

だってあの人は前世の人で______

「姉さーん!」

「エリーナー!」




















もう、死んでしまったのだから

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