第4話 貴族を嫌う理由

コンコン

ドアを叩く音がする。

「お嬢様、入ってもよろしいでしょうか」

「ええ。いいわよ」

「失礼します」

彼女は私のメイドのジェシカ。子供の頃からいつも側にいてくれた。

「お嬢様、そろそろ」

「ええ。分かってるわ」

今夜はクアイエッセ様たち主催のパーティー。

もちろん私も呼ばれているのだけれど……あまり気乗りしない。

私は前世で刀を使う仕事をしていてドレスとかヒラヒラしたものは極力着ないようにしていたの。まぁ、私が普通に着たくないって言うのも理由だけど……

「今回のパーティー、行かなきゃダメ?」

「行かなきゃダメです。今夜のパーティーの主催者、誰か分かってますか?」

「分かってるわよ」

主催者が誰かなんて嫌ってほど知ってる。

「分かってるけど嫌なものは嫌なのよ」

「ハァ、何でそんなに嫌なんですか。普通なら喜んでるとこですよ」

だって貴族とか嫌いだし。

ん?私が何故貴族が嫌いかって?

それは、パーティーが始まればすぐに分かるわ。


パーティーはお城で行われ、名高い貴族や令嬢たちが集まっている。

「おお!ウィンド姉弟!大きくなられましたな!」

「お久しぶりです。チャルロ・ハンス様」

このふくよかな男性はチャルロ・ハンス様。歴史ある貴族で、私たちにとっての近所のおじさんみたいな存在。

「エリーナ様もまた一段と美しくなられて」

「光栄ですわ。チャルロ様。昔のようにエリーナと呼んでも構いませんのよ?」

昔はよく屋敷に遊びに来てくれたなぁ…

「いえいえ、エリーナ様がご結婚すれば王族になられるのですから様を付けるのは当たり前です」

そう。チャルロのように昔はよく遊んでくれた人相手でも、私が王子の婚約者と言う肩書きでみんな私を離れていく。

それが私が貴族や王族を嫌いになる理由。

そして貴族という位の高い立場ということにより位の低い平民たちに酷い扱いをすること。これも私が貴族を嫌う理由。

「前世では、こんな差別、無かったのになぁ」

「姉さん。何か言いましたか?」

「何でもないわ」

私の小さな独り言は、にぎやかなパーティーの声で、掻ききれてしまった……

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