第22話『奪われた言の葉、沈む漆黒』
互いに間合いを読んでいる。
敵は真ん中に立つ白の、カエデはぐるりと自身の周りを囲う兵士らの。
交わり会う視線、息をすることさえ許されない緊張感。
カエデは待っていた。
誰かが一言でも話してしまえば、それでよかった。
「発砲用意!」
痺れを切らした敵は、まんまとこちらの策に嵌っていく。
撃たれる前に口元の印に手を当てて、支配と叫んだ。
見つめられた先の司令担当の兵士は、何事も無かったのかのように発砲号令をかけた。だが、それは自身がかけたと思っているだけだった。何度声を出そうとしても、震えない声帯。おかしいと思った兵士たち.仲間に話しかけようよして,それでやっと,自分たちも声が出なくなったことに気づいて、段々と顔を見合わせていく。
「セナ、あとは頼むで」
その騒動の合間にも,薄墨の空が作り出した影は、兵士らの足元に静かに広がっていた。ぬっと影からでてきた複数の手が、兵士らの足に絡みつく。助けも呼べず、ただただ体が引きずり込まれていく彼らを、円の中心でカエデは,ごゆっくり,と口角を上げて見送った。
セナは深い深い闇の底で、地上に出した複数の手を操っていた。
あれは、自分を複製して増やしたもの。
敵1人と俺1人、闇の至る所で戦いが繰り広げられる。敵にとっては何も見えない闇の中、なんでも見える俺が負けるはずもなく、ひとりまたひとりと崩れ落ちていく。
なぜだろうか.この体になってから,時折、うんと誰かの血が見たくなる。
あわよくばこの体に浴びて、ゴクリと飲んでみたくなる。
目の前に落ちていた、兵士の死骸が目に入った。服はザグリと切られて、だらりと横たわる。血の気のない白い腕が美味しそうに見えた。それは、今回だけでない。
両手で腕を持った。
そして、かぶりつこうとした時、
「…食べたらあかんよ、」
薄橙の相方の声は、闇の中でもよく届く。
ーーー
カエデ ブースト剤使用時
人の声を奪う+拡声
セナ ブースト剤使用時
夜に溶ける+複製
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