第151話 期末試験に向けて
夕食も終わり、みんなで雑談をしていると、清華の一言で一部の人が凍りついた。
「ところで、期末試験が近づいてきてますが皆さん大丈夫ですか?」
この一言で動きが止まったのは康太と瑠美夏だった。二人とも顔を強ばらせて、汗までかいて、どう見ても大丈夫ではないのは明白だった。
「あれ? でも瑠美夏って中間は赤点免れてたよね?」
確か中間テストがあったのは、僕と瑠美夏が仲違いしてる間だ。テスト前は学校に来てなかったけど、仲直りしてからテストが何点だったのかを聞いたけど、全教科赤点を回避していた。ギリギリだったけど。
「ち、中間の時はリュータにノートを見せてもらってヤマ張ったから……」
「今は予習復習はしてる?」
瑠美夏は俯いたまま首を横に振った。どうやら本当に自信がないみたいだ。
「君塚は予想通りだから大して驚かねーけど、赤点取ったら補習だろ?」
「お前さらっと酷いな坂木! そういうお前はどうなんだよ!?」
「俺は毎回平均点近くは取ってるよ」
「ま、マジかよ……坂木も俺と同じだと思ってたのに」
康太はガクッと項垂れてしまった。
う~ん……この様子からして、一番危ないのは康太なのかもしれないなぁ。
「康太。もし赤点取ったら補習あるの?」
「……ある」
ボソッと言ったかと思ったら、康太は震えだしてしまった。
「……あの鬼教師どもの補習なんか受けたくねぇ」
どうやら康太の学校の先生は厳しい人がいるみたいだ。校則は緩いけど授業は別……といったところかな?
「恭平! 頼む、勉強を教えてくれ!」
「もちろんいいよ」
だからそんな縋るような目をしなくても大丈夫だよ。
「い、いいのか!?」
「当たり前だよ。僕は康太とも夏休みを過ごしたいからね」
「恭平……恩に着るぜ!」
僕はオーバーだなぁ……と内心で思いながら、「うん」とだけ返事をした。
康太の学力がどのくらいなのかはわからないけど、みんなで楽しい夏休みを過ごすために、全力でサポートしよう。
そう決心したやさき、清華が「はい」と言って手を挙げた。いつもながら見事な挙手だ。
「はいせーか」
瑠美夏が清華の名を呼ぶと、清華は椅子から立ち上がった。
え? なにこれ? 授業で先生が生徒を指名してるみたいだ。
「でしたらわたくしのお屋敷で、また勉強会をするのはどうでしょう?」
柊家のお屋敷で勉強会か……。
前回は僕と竜太と三人でやって、あの時は僕はお屋敷にお世話になっていた時期だ。
確かに清華が住んでいるお屋敷なら一部屋一部屋がめちゃくちゃ広いから、五人が教科書を広げたとしても余裕だろうな。
「俺は柊さんがいいなら異論はないぜ」
「僕も」
僕と竜太は賛成っと。
「私、せーかのお屋敷に入ったことがないから、一度行ってみたかったのよ!」
「瑠美夏、遊びに行くわけじゃ……」
「わ、わかってるわ……」
「ふふ、瑠美夏さんならいつでも来ていただいて大丈夫ですよ」
「ホント!? なら今度遊びに行くわ」
瑠美夏と清華は本当に仲がいいなぁ。この短い会話で遊ぶ約束までしてしまうんだから。
そんな仲睦まじい二人を見て、僕の中にある一つの懸念が生まれてしまうのだけど、僕は深く考えないようにした。
いつかは向き合わなければならないけど、逃げかもしれないけど、今はこの気の許せる友達……そして特別な二人との楽しい時間を堪能しよう。
テストも控えてるし、考えるのはその後でもいいよね。
ということで、話し合いの結果、テスト前の日曜日に清華のお屋敷で勉強会をすることが決定した。
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