第150話 将来のビジョン

「「いただきます!」」

 竜太も来てくれて、いよいよ六人での夕食が始まった。

「久しぶりに恭平の作ったメシが食えるの、マジで楽しみにしてたんだよ」

 竜太はそう言いながら、スプーンを手に取り、チキンライスに乗っている卵の表面を持っていたスプーンで切った。

 そうすると中からふわとろな部分が顔を出し、それが見事にチキンライスを包み込んだ。

 今回はみんなが来るということで、普通のではなくふわとろオムライスを作ってみたんだけど、竜太以外のみんなの反応も上々なので、こっちを作って正解だったかな。

「すげーな恭平! お前、こんなのも作れるのかよ!」

「う、うん。たくさん練習したからね」

「相変わらず美味いな……!」

「卵がまるでお花が咲いたように綺麗に開いて……お見事です恭平さん!」

「ええ。私も感服しました」

「んふ~♪ さいこ~!」

 清華は目を輝かせ、瑠美夏はオムライスを一口食べて、頬に手を当てて幸せそうな表情をしている。

 みんな少々オーバーな感想じゃない? って思わなくはないけど、喜んでくれてよかった。

「恭平お前、将来は食べ物屋を開けるんじゃないか?」

「え?」

「レストランでも喫茶店でも定食屋でも、これだけ美味いならすぐ人気店になるだろ」

「そ、そうかな?」

「ああ。いやマジでうめ~!」

 そう言って康太はまたパクパクとオムライスを食べ始めた。

 それにしても、料理関係の道か……。

 今まで将来何になりたいかなんてあまり考えてこなかった。

 以前の僕なら、普通にサラリーマンをしながら瑠美夏のためにひたすら頑張るって未来を見据えていたけど、好きを仕事に出来るのなら、いいかもしれない……。

 もし僕が小さな定食屋を出したなら、僕が料理をして、その隣には……。

「────」

「っ!」

「上原様、どうかなさいましたか?」

「……い、いえ! なんでもない、です」

 僕が突然驚いたものだから、人の機微に敏感な瀬川さんが心配そうに声をかけてくれた。

「恭平さん。少し汗をかいてますが……もし具合が悪いのでしたらいつでも言ってくださいね」

「そうよきょーへー。一人の時に悪化したら洒落にならないんだからね? 疲れたのなら遠慮なく私たちに頼ってよ」

 竜太も康太も瑠美夏に同意するように「うんうん」と二、三度首肯した。

「本当になんでもないんだ。……ありがとうみんな」

 僕がそういうと、みんなは安堵したのか食事を再開したんだけど、瑠美夏と清華は時々チラチラと僕を見てくる。

 口ではああ言ったけど、もし僕が本当に体調を崩したら、いつでも動けるように警戒をしてくれているのかもしれない。

 嬉しいな。僕を心配してくれる大切な友達、そして特別に想う女性がいるのって。

 瀬川さんとの関係ってなんなんだろう? 友達……はちょっと違う気がするし……。

 僕の作ったオムライスを美味しそうに食べてくれる大事な人たちの笑顔を見ながら、僕も笑顔で自分の作ったオムライスを食べた。

 それにしても、さっきの想像に出てきた女性……あれは確かに───

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