第147話 お菓子は食べて大丈夫?

「それで上原様。私に用があったのではないのですか?」

 いまだに顔が赤い清華を見ていたら、瀬川さんに声をかけられた。

 そ、そうだった。さっきのやり取りですっかり忘れていたけど、僕には瀬川さんに聞きたいことがあったんだ。

「えっと、清華ってお菓子食べても大丈夫なんですか? ハンバーガー等のジャンクフードはいいと聞きましたけど……」

「旦那様や奥様から特にそういった制限を設けられてはいませんし、私も言われていないので大丈夫だと思いますよ」

 瀬川さんはそう淡々と口にした。

 どうやらお菓子も禁止されてないみたいでよかった。

「そうですか。ありがとうございます瀬川さん」

「恐縮です」

「そうとわかればいっぱい買いましょ」

 瑠美夏の表情が明るくなって、『きのこの村』を五つカゴに入れた。

 え? ちょ、多すぎない!?

「る、瑠美夏。ちょっと入れすぎじゃない?」

「えー? でもせーかがハマることを考えたらこれくらいで良くない?」

 既に清華がきのこ派になるのが瑠美夏の中で決定している!?

「いやいや、『たけのこの丘』かもしれないじゃないか。そうじゃなくても五つは入れすぎだから、二つにしようよ。僕も二つにするから」

「あ、ちょ……!」

 僕は瑠美夏の返事を待たずに、『きのこの村』を三つ売り場に戻し、『たけのこの丘』を二つカゴに入れた。

 清華に布教するのもいいけど、五つも一度に買ったら大変だ。

 瑠美夏って食べ始めると止まらなくなる時があるから、買う量にも気をつけているんだよね。

 とりあえず二個買って、清華が気に入った方をあげたらいいや。瑠美夏ももし清華がきのこ派になってくれたら、その嬉しさで喜んであげそうだし。

「はい。じゃあ他のところに行くよ……ってあれ? 康太は?」

 さっきまで近くにいたと思っていた康太の姿が見当たらない。

「君塚様なら、「三人の邪魔したくないから雑誌を立ち読みしてる」と言われて歩いていきましたよ」

「そ、そうですか……」

 邪魔って……全然そんなことないから普通にいてくれて良かったのに……。

「それじゃあ、早いとこ材料を買って康太と合流しよう」

「わかったわ」

「はい」

「承知しました」

 僕はカートを押し、三人もついてきてくれるんだけど、僕たちは周囲の人たちからめちゃくちゃ見られていた。

 それもそっか。クラスの二大美少女が揃って楽しそうに買い物してるし、瀬川さんだって美人だから、目を引いちゃうのは当然か。

 もしかして、きのこたけのこ論争をしている時からこうやって見られていたのかな? 会話に夢中で全然気づかなかったけど、可能性はあるよね。

 あ、僕たちとさほど年齢が違わないような女の人二人組が僕を見てヒソヒソと話している。荷物持ちとか、パシリとか思われてるのかな?

 ……でも、そんな視線をいちいち気にしていたら、瑠美夏と清華の近くになんかいられないから、僕はもう気にしないようにしよう。

 周囲がなんと言おうが僕は僕だ。

 うん。そう思うと、ちょっと気にならなくなったぞ。この調子でメンタルも鍛えていこう。

 それから僕たちは手早く買い物を済ませ、康太と合流し、現場の人への差し入れのビールを購入してから、瀬川さんの運転する車で僕の家へと向かった。

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