第137話 瑠美夏と付き合ってる疑惑
そして昼休み。
僕は竜太と、一昨日一緒にお昼を食べた二人と、四人で昼食を食べていた。
昨日の騒動で、彼らも僕にいろいろと言ってきたりはしたけど、その後すぐに謝ってくれたので僕は謝罪を受け入れ、怒っていた竜太も矛を収めてくれた。
「なあ上原。お前、小泉さんと付き合ってるのか?」
「っ! ん! ごほっ、ごほっ……!」
一人がとんでもないことを言ってきて、卵焼きを頬張っていた僕は思わずむせてしまった。
「おい恭平! だいじょ───」
「恭平さん! 大丈夫ですか!?」
僕が咳き込んで、隣にいた竜太が声をかけてくれたんだけど、その途中で僕たちとは別グループとお弁当を食べていた清華が僕の咳を聞いて駆け寄ってきていた。
ちなみに瑠美夏は教室にいない。僕はお花を摘みに行くって清華に言っていたのを見ていた。
「だ、大丈夫……。ありがとう清華、竜太」
「お水です。飲んでください!」
清華は僕の水筒を手に取り、僕に手渡してきた。表情からもすごく心配してくれているのがわかる。
「うん。ありがとう清華」
僕はもう一度清華にお礼を言い、水筒を受け取り水を飲む。
「あれ? せーか何でそこにいるの?」
僕が水を飲んで卵焼きを流し込んでいると、お花を摘みに行っていた瑠美夏が帰ってきた。窓際前方の女子グループと一緒に弁当を食べていたはずなのに、今は後方の僕たちのグループにいるから不思議がっているみたいだ。
「恭平さんが食べ物を喉に詰まらせて……」
「え!? ちょっときょーへー、大丈夫なの!?」
それを聞いた瑠美夏も急いで僕の元へとやって来た。
「……ぷはぁ! 大丈夫だよ瑠美夏。ありがとう」
なんとか流し込んだ僕は、心配してくれた瑠美夏にもお礼を言った。清華同様、めちゃくちゃ心配そうな表情をしている。
「よかったー! もう、心配したんだから!」
「ごめんね。このとおり僕はもう大丈夫だから」
二人を元気づけるため、ちょっと大袈裟に振る舞う。心配性な二人に、もう本当に心配ないよって思ってもらうために。
「うん……。でもまた何かあったら言ってよね!」
「そうです。わたくしもまた駆けつけますからね!」
「本当にありがとう。瑠美夏、清華」
僕が笑ってお礼を言うと、瑠美夏と清華は頬を朱に染め、驚いた……というか、ドキッとした表情を見せたと思ったら、すぐにへにゃりと笑った。
「えへ♡」
「んふ~♪」
「「!!?」」
僕に名前を呼ばれた時に見せる、二人のゆるゆるな顔を見た、一緒にお昼を食べている男子の頬は真っ赤になっていた。
あんな顔、学校では絶対に見ることはできないからね。
「では皆さん、わたくしたちは戻りますね。瑠美夏さん、いきましょう」
「ええ。きょーへー、リュータ。またあとでね」
「うん」
「おう」
「「…………」」
二人がひらひらと手を振りながら元のグループへと戻っていったので、僕と竜太も同じようにして見送った。
あとの二人はまだぽかんとしながら瑠美夏と清華をじっと見ていた。
それから少しして、クラスはいつもの空気を取り戻し、それぞれのグループから雑談が聞こえてくる。一緒に食べていた二人もようやく落ち着いたのか、一人が僕にこんな質問を投げかけてきた。
「なあ上原、さっきの質問なんだけど、お前って本当に小泉さんと付き合ってないのか?」
「う、うん。付き合ってないよ」
質問が『付き合ってるのか?』から『付き合ってないのか?』に変わった。
さっきの一幕で、もし瑠美夏だけが来ていたら言葉も変わらなかったのかな?
「でもお前、今日小泉さんと一緒に来てなかったか?」
「そうだけど……」
いつも途中までは一緒に来ていたし……って考えたところでハッとした。
そうだ。僕と瑠美夏の家が隣同士というのは竜太と清華しか知らないんだった。
確かに……それを知らなくて僕と瑠美夏が一緒に教室に入ってくるのを見ていたら、付き合ってると思っちゃうよね。
「言ってなかったけど、僕と瑠美夏の家は隣なんだ」
「えっ! マジかよ!?」
「あ、そういえば昨日、小泉さんが上原を『幼馴染』って言ってたよな? 家が隣同士ならそうなるよな」
「俺の家も近くにあるぜ。俺たちは三人で幼馴染だ」
竜太の家は僕たちの家から十分以内の場所にある。だから子供の足でも行きやすく、当時から三人でよく遊んでいたんだ。
「それにしても、この幼馴染のメンツがすごいな」
「だな。坂木と小泉さんはもちろんだけど、昨日の話を聞いて上原もスゲーって思ったし」
「え?」
いやいや、僕なんてちっともすごくないからね!?
「そして今はその中に『聖女様』まで入ってるんだもんな! このメンツを見てスゲーって思わなかったら、どこでスゲーって言うんだよ」
いろいろあると思うよ? なにかの抽選に当たった時とか、SNS映えする料理や景色なんかを見た時とかさ。
「スゲーと言えば、上原はあの美少女二人に惚れられてるんだよな?」
「う、うん……」
そうはっきりと言葉にされるとやっぱり照れてしまうよ……。
「あの二人に言い寄られてるってマジで羨ましいぜ!」
「だな! どっちを選んでも最高な未来しか見えねえもんな」
「あ、あはは……」
僕は笑うことしかできなかった。
彼の言う通り、清華と瑠美夏……どちらを選んでも、きっと楽しい生活が待っているのはわかる。
だけど、選べればの話だけど……。
二人ともすごく可愛くて魅力的だから、簡単になんて選べないよ。
「お気楽だな……」
まだ僕たちの話題で盛り上がっていた二人を見て、竜太はボソッと呟いていた。
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