第136話 清華の武器?

 しかしそんな中、僕たちに向かって駆けてくる女子が一人いた。

 言うまでもないけど清華だ。

 暑くてジメジメしているからか、長く美しい黒髪をポニーテールにしているから、一歩一歩進むにつれ、清華の髪が揺れる。

 そして夏服だから、清華の大きなふたつの果実も確実に揺れていて目のやり場に困る。

「おはようございます。恭平さん、瑠美夏さん」

「おはようせーか」

「お、おはよう……清華」

 僕はまださっきの光景で照れてしまって、つい遠慮気味に挨拶をしてしまった。

「どうしました恭平さん?」

「いや、その、えっと……」

 ど、どうしよう……なんて答えよう。

 こんな時に頼りになる竜太はまだ朝練から戻ってないみたいだし。えっとえっと……。

「せーか……あんた天然で自分の武器を披露するのはどうなのよ?」

「武器……ですか?」

 ちょっと瑠美夏? ここ、クラスメイトのみんなもいるんだからね!?

 未だにわかっていない清華に、瑠美夏は清華の大きな胸を指さした。

「あ…………」

 すると、ようやく理解した清華はかあぁ……と一気に顔を赤くし、細い両腕で自分を抱くようにして大きな果実を隠す。……隠しきれてないけど。

「す、すみません恭平さん! は、はしたないところを……」

「い、いや……気にしないでよ。僕もその、見てしまってごめんね」

「朝っぱらからきょーへーを誘惑するなんて……この『聖女』やっぱり侮れないわ」

「ご、誤解です瑠美夏さん! わたくしはただ……!」

「ただ、なによ?」

「恭平さんと、そして瑠美夏さんに早くお会いしたかったので……」

「っ!」

 頬が赤いままでの上目遣いは効果は抜群で、僕の心臓はドクンと跳ねてしまった。

 そしてこの清華の一言で、周りがまたざわざわとしはじめた。

「聞いた!? やっぱり清華ちゃんって上原君が好きなんだね!」

「昨日から知ってたけど、ガチじゃんあれ」

「小泉さんも上原君とくっついてきたし、どっちもガチ惚れだよね!」

「ああ……やっぱり『聖女様』は……」

「くそ! 上原になりたい」

「あれって小泉さんからくっついてたのかな?」

 などなど聞こえてきた。やっぱりこの二人の人気ってとてつもないなぁ。

「お前らなんでこんなところで突っ立ってんだ?」

 後ろから聞きなれた声が聞こえてきたので、僕と瑠美夏は後ろを見上げると、そこには朝練終わりの竜太がいた。

「おはよう竜太」

「おはよ。あんたも朝から練習大変ね」

「おはよう三人とも。いや、お前らのこの状況に比べたらマシだと思うがな」

「あはは……」

 一緒に教室に入っただけでちょっとした騒ぎが起きてるもんね。

「とにかく、皆さん席にカバンを置きませんか? もうすぐ先生もやってきますし」

 教室に飾られているシンプルな時計を見ると、まもなく予鈴がなる時間になっていた。

「本当だ。じゃあ今日も頑張ろうね」

「ええ!」

「はい!」

「……寝ちまわないよう気をつけるよ」

 朝練で疲れてるもんね。頑張って竜太!

 そうして僕たちはそれぞれ自分たちの席に移動し、授業を受けてあっという間にお昼休みになった。

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