第135話 公開告白
校舎に入り、僕は上履きに履き替える。
周りの生徒が僕をチラチラと見ている。だけどこの視線は今に始まったことではない。
じつは学校に近づくにつれ、同じ新栄の生徒が見えてくると、その人たちは必ずといっていいほど僕と瑠美夏を見てくる。
昨日の件は瞬く間に学校中に広がり、既に全校生徒の知るところとなっている。
うう……この状況は覚悟はしていたけど、すれ違ったり近くを通る人ほぼ全員に見られるので、覚悟が揺らぎそうだ。
「きょーへー? どうしたの? 早く行きましょ」
僕が頭の中でぐるぐる思考を巡らせていると、いつの間にか上履きに履き替えた瑠美夏に呼ばれていた。
「う、うん」
僕も急いで上履きに変え、瑠美夏の隣に並んで歩く。
「それにしても、みんなからの視線がすごいね……」
「せーかがきょーへーのことが好きってカミングアウトしたからね。あの子、この学校のインフルエンサーだから……」
「それを言うなら瑠美夏もだからね!?」
「え?」
まさか、瑠美夏は自分が今、清華と肩を並べるほどの人気を得ようとしていることを知らないの!?
「噂で聞いたけど、瑠美夏ってあのクラスマッチ以降によく告白されてるんでしょ?」
「なっ! ……ど、どうしてそれを」
この狼狽えよう……僕には内密にしようとしていたのかもしれない。
「噂って一人歩きするものだからね。それが僕のところに来たっておかしくはないよ」
「で、でも! 全部断ってるから……! 私は、私が好きなのは、きょーへーだけだから……」
「っ!」
こんなところでまさかの公開告白をされるとは露ほどにも思っていなかったので、僕の頬は一気に熱を帯びてしまった。
そして僕たちの近くにいた生徒たちにも告白は聞こえたみたいで、みんなざわざわと盛り上がっている。よく見たら、女子はキャーキャー言っていてすごくテンションが上がってるんだけど、男子は突然の告白を聞いて赤面している人や、顔が絶望に染まってる人、膝から崩れ落ちてる人がいる。
おそらくその人たちは、昨日のアレがドッキリか何かで、密かに瑠美夏を狙ってた人たちなんだろうな。
「わ、わかってるよ。ありがとう瑠美夏。さ、早く教室に行こう」
「……うん!」
瑠美夏の満面の笑みが可愛くて直視出来なかった僕は、早足で教室へと向かう。
「ま、待ってよきょーへー!」
そしてそんな僕を追いかけて、横に並ぶ瑠美夏。肩と肩が微かにだけど当たっている。
そしてそのまま教室に入ると、グループに分かれて雑談をしていたクラスメイトの話し声がピタリと止み、みんなが僕たちを見た。
まさかみんながいっせいに視線を向けるとは思ってなかったので、僕は出入口付近で立ち止まってしまった。
瑠美夏も驚いていて、僕と同じ感想を思っていそうだ。
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