第129話 バレていた秘密
「あ!」
僕たちが揃って教室に戻ると、中にいたクラスメイトの視線が一気にこちらに向いた。
瑠美夏と清華の二大美少女が揃って帰ってきたんだ。そりゃあ目を引く……あれ? でも昨日は教室で二人が仲良くしている場面があったのに、その時の周囲の反応はこんなんじゃなかったはず。昨日は微笑ましいものを見る眼差しばかりだったし。
僕がそんな考えを巡らせていると、陽キャな女子二人がこちらに近づいてきた。
「ねえねえ清華ちゃん、瑠美夏ちゃん」
あ、どうやら清華と瑠美夏に用があるみたいだ。
でも、あの二人って清華とあんまり喋ったところ見てない気がするんだけど……う~ん。
「はい。なんでしょう?」
「どうしたの?」
「あのね。怒らないで聞いてほしいんだけど、ふたりの好きな人って……もしかして上原君?」
「「え!?」」
「っ!」
え? 嘘!? なんで周りにバレてるの?
昨日だって周りに誰もいなかったはずなのに……!
教室に入る前まではざわざわしていたのに、今はふたりの発言を聞き逃すまいと、みんなふたりに注目している。
「どど、どうしてそう思われたのですか?」
……清華さん。そんなに動揺していたら肯定してるのと同じだよ。
そんなツッコミを内心でしている僕も気が気じゃないけど。
「クラスマッチの決勝でもうダメだって思った時、清華ちゃんと瑠美夏ちゃんが何故か拳を上にあげてて、見たら上原君と坂木君がいたし、男子の決勝で上原君がシュートを打つ前に清華ちゃん、『恭平さん』って言ってたじゃん。それに昨日、学校近くで上原君と瑠美夏ちゃんと清華ちゃんのお付きの人と四人でいたって目撃情報もあるし」
「「「…………」」」
「言わんこっちゃねぇな」
僕を含めた竜太以外の三人は固まっていて、竜太はやれやれといった感じで額に手を当てていた。
まぁ、今にして思えば、あれでなんでもないですって言う方が無理があるよね。
「……え~っとですね」
あ、清華が僕を見てきた。これは『言ってもいいですか?』ってアイコンタクトで聞いている。
瑠美夏も遅れてこっちを見た。
ここまで情報が出てて、それでも誤魔化すのは無理があるし、きっと誤魔化しきれない。
それに、以前の僕だったら、もしかしたらこの状況でも首を横に振っていたかもしれないけど、二人の気持ちと向き合うと決めたんだ。いつまでも隠していたら二人に失礼だし、それで『ちゃんと向き合う』なんてとてもじゃないけど言えないよね。
この学校の有名人二人なんだ。いつかはこんな日が来るって思っていたし、それが早くなっただけだ。
僕は一度、コクンと頷いた。
すると清華も瑠美夏も笑顔で頷いて、再び陽キャ女子二人に向き直った。そして───
「はい。おふたりのおっしゃる通り、恭平さんが、わたくしの好きな人です」
「私もよ。きょーへーが好き」
清華と瑠美夏がそう告げると、教室内がどっと湧き上がった。
「きゃー! やっぱり!」
「ふたりは恋のライバルなんだ!」
女子からはそんなテンション高めな言葉が飛んでくるんだけど、男子はその反対で、明らかにテンションが下がっている。焼かれそうなほどの嫉妬の視線が痛い。あ、一人が膝から崩れ落ちた。
「清華ちゃんは坂木君と噂があった時、完全否定してたけど、まさかその時から?」
「わたくしが恭平さんを好きに───」
「ふざけんなよ!!」
清華の言葉を遮り、一人の男子が大声を上げた。みんなそれにびっくりして教室内、そして廊下にいた人たちも静まり返った。
あれは……杉内君!?
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