第128話 痴れ者の気配……?
「しかし、これを恭平に送り付けたやつは身の程知らずだな。柊さんの命の恩人を脅迫……危害を加えようとするってことは、柊家全員に喧嘩を売ってるようなものだからな」
「で、でも、事を大きくしたくはないから、出来る限りは僕が何とかしたいよ」
柊家のみなさんが僕の身を案じてくれるのはとてもありがたいけど、まだ犯人が本当に僕に危害を加えようと企てているとは限らない。
清美さんや一博さんの耳に入ったら、どんな手を使ってでも僕を守りそうだ。それはありがたいけど、同時に怖いとも思う。
だから、僕の手に負えなくなるまでは、なんとか頑張ってみようと思う。
「お前がそう言うなら無理に止めはしないが、ヤバかったらすぐに言え。駆けつけるから」
「うん。ありがとう竜太」
「気にすんな。幼馴染で親友だろ? そうだ。君塚の奴にも伝えておいていいか?」
「康太に?」
「おぅ。俺が部活でいない間、あいつにも恭平を守ってもらう」
「でも、康太も迷惑じゃ……」
それに、康太は瑠美夏を守ろうとしてヤンキーに殴られてしまったんだ。
僕のせいで康太がまた怪我でもしたら……。
「あいつはお前をマジで大切に思ってる。だから、言わないでお前が危険な目にあうほうが嫌だろうよ」
「……」
僕も、もし康太に危険が迫っていたら守りたい。なんの役にも立てないかもしれないけど、じっとしているなんて……嫌だ!
「……わかった。お願いするよ」
「おぅ! ……ん?」
竜太が康太にメッセージを送ろうとスマホを操作していると、突然屋上の扉を見た。
「どうしたの?」
「いや、なんか扉が閉まる音が聞こえたような……っ!」
そう言うと、竜太は自慢の俊足で一気に扉まで走り、勢いよく扉を開けた。
「…………」
「リュータ。誰かいた?」
「……いや」
どうやら気のせいだったのか、竜太はゆっくりとこちらに戻ってきた。
「っかしいな……確かに聞こえたんだが」
「きっと空耳よ」
「ん~……」
僕も空耳かなって思ったけど、竜太はそれでも納得してなくて、首を傾げて唸っていた。
「恭平さん」
あれからしばらく瀬川さんと電話で話していた清華が、真剣な表情で僕を呼んだ。
「どうしたの清華?」
「先ほど加奈子さんが言っていたのですが、このような脅迫文を送る輩は、大抵があまり強く言えない人だから、もしかしたら犯人はスクールカーストが下位の人間かもしれない、と」
……確かに瀬川さんの推理は一理あるかもしれない。
スクールカースト上位の人が犯人なら、わざわざこんなまどろっこしいやり方はしてこずに、僕が一人になったタイミングで直接言ってくると思う。僕相手にそんな手段を講じる必要がない。穏便に済ませようとしているのかもしれない可能性はあるけど。
僕はチビでヒョロくて弱い……家事が得意なだけのカースト最下層の人間だ。
陽キャの人にすごまれたら、それだけで萎縮してしまうだろう。相手もそれはわかってるだろうし。
だとすると、やっぱり犯人は清華と瑠美夏が好きな、僕と似たような人……になるのかな?
「恭平さん?」
「え? あぁ、ごめん。ちょっと犯人について考えていて……あとで教えてくれた瀬川さんにお礼を言わないとね」
「恭平さん。あまりおひとりで先走らないでくださいね」
「そうよきょーへー。危険が迫ったらすぐに逃げて、私たちや瀬川さん、コータに言うこと。約束して」
「ありがとう。約束するよ」
僕の心配をしてくれる人がいっぱいいるんだ。その人たちを悲しませないためにも、慎重に動こう。
「てかジメジメするから、そろそろ教室に戻らねぇ?」
竜太の一言で、僕らはベンチから立ち上がり、教室に戻った。
瀬川さんにも護衛をお願いしたけど、このあとすぐに事態が動き、終息に向かうことを僕たちはまだ知らない……。
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