第126話 脅迫文を見せる恭平

 今は昼休み。

 僕は屋上で竜太、清華、瑠美夏と一緒にお昼を食べていた。ここには男子と女子で別々のタイミングでやって来た。

 晴れているけどジメジメとした気候と暑さで肌がジリジリと焼ける。

 この暑さ、清華や瑠美夏は大丈夫なのかな?

 それはさておき、僕は教室に戻ってからずっとあの手紙のことを考えていて、授業どころじゃなかった。

 一体誰が何のためにあんな手紙を僕に送ったんだろう?

 考えられるとしたら、清華と瑠美夏に好意を寄せる誰かが、僕と二人のやり取りを見て嫉妬してあんな手紙を作ったんだろうけど、僕は学校では二人とあまり話していない。

 だから、僕たちの事情を知っている竜太以外は、ただのクラスメイトとしか思われていないはずだ。

 瑠美夏と付き合っていると思っていた頃、たまに瑠美夏が僕に自分の宿題を代わりにやってもらうために僕の席にやってきたけど、あれだけでこの手紙を送り付けるだろうか? ほんの数秒だし、ノートを渡す瞬間を見ていなければ、これも普通のクラスメイトのやり取りの範疇のはずだ。

「それできょーへー。あのラブレターは誰からだったの?」

 僕が食べながら考えごとをしていると、横にいる瑠美夏から早速この質問が飛んできた。

 それを聞いた竜太と清華はピタッと止まってしまった。

「マジか恭平! お前、ラブレター貰ったのか!?」

「声が大きいよ竜太!」

 この件はもちろん誰にも言っていないから、竜太も本気で驚いている。

 僕たち以外誰もいないから聞かれてないとは思うけどさ、この手の話はやっぱり他の人に聞かれると恥ずかしい。……ラブレターではないけど。

「き、恭平さん! ラブレターなんて……いい、一体どこのどなたからなんですか!? まさか……告白をお受けするつもり───」

「お、落ち着いてよ清華!」

 この世の終わりみたいな顔をして、その目には涙を溜めているし、手がめちゃくちゃ震えていて、持っているお箸を今にも落としそうだよ。

 うーん……こうなると逃げるのも誤魔化すのも不可能だから、言うしかないよね。この三人は言いふらしたりしないだろうから安心だし。

「えっと、実は───」

 僕は三人に、この手紙が下駄箱に入っていて、中を確認したらラブレターではなく脅迫文みたいな内容だったことを話し、手紙も見せた。

「な、何よこれ!?」

「てか、高校生にもなって怪盗のまねごととか……」

「……」

 この通り、三者三様のリアクションだ。

「というか、なんでこんなのがきょーへーに届くのよ!? こんなの送ったやつはふざけてんの!? バカなの!!?」

 瑠美夏、怒ってる。ちょっと嬉しいな。

「まぁ、単純に考えると瑠美夏と柊さんに好意を寄せてる誰かが、恭平と仲良く話している場面を偶然目撃して、それで嫉妬に駆られて送り付けたって推理が妥当だろうな」

「でも、僕は学校内では二人とはあんまり───」

「……恭平お前、それ本気で言ってんのか?」

「え?」

 竜太がなぜか信じられないものを見るような視線で僕を見てくる。長い付き合いだけど、こんな視線は初めてかも。

「お前、昨日は体育館で柊さんと二人でバスケ部の部活を見学してたし、その後もこの二人と瀬川さんとしばらくいたんだろ?」

「う、うん。でも、それは他に生徒がいなかったし───」

「たとえ目で見えなくても、離れたところからお前らを見ているやつだっているかもだろ。柊さんはもちろん、瑠美夏もこの学校で人気あるし。新聞部のまねごとをしてる奴もいないとは限らないだろ?」

「た、確かに……」

 一応僕なりに気をつけていたつもりだったんだけど、二人の人気は僕の想像を超えるのかもしれない……ならいくら気をつけてもダメなんじゃあ……。

「いっそのこと、私とせーかがきょーへーのことが好きなの、言っちゃってもいいんじゃない?」

「それが一番手っ取り早いのもわかるが、そうなるとそいつらの興味は必然的に恭平に集中することになる。だから恭平が首を縦に振らない限りはやめておいた方がいいだろうな」

 竜太の言う通り、この二大美少女が惚れているのが僕だと周囲に言えば、僕に集中砲火が来るのは想像に難くない。……僕の、覚悟の問題……だよね。

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