第121話 瑠美夏も同様に……
「瑠美夏、お疲れ様」
「お待たせしました瑠美夏さん」
僕と清華は下駄箱で瑠美夏と合流した。
「私も今来たところだから待ってないわよ。……んふふ~♪」
下駄箱にいた瑠美夏に声をかけると、瑠美夏はさっきの清華みたいに緩みきった笑みを見せた。
そう……瑠美夏も清華と同じように、僕に名前を呼ばれるととても嬉しそうにするのだ。
清華は七年ぶりだからまだわかるんだけど、瑠美夏は昔から呼び方変わらないのに……なんでなんだろ?
「あの……前から思ってたんだけど、なんで瑠美夏まで僕に名前を呼ばれてそんなに嬉しくしてるの? 昔からいつも呼んでたのに」
「それは、ほら……きょーへーが好きって自覚して、好きな人に名前を呼ばれるのはこんなに嬉しいんだってわかったら、あんたに呼ばれる度に顔が自然と緩んじゃうのよ」
「な、なるほど……」
そっか、僕を好きって自覚する前は煩わしく思っていたから、だから何も思わなかったけど、僕が好きって自覚してからはしばらく瑠美夏と清華を名前で呼ばなかったから、改めて呼ばれて嬉しくて仕方がないってやつなのかもしれない。
「やはり瑠美夏さんもそう思いますか!?」
「もちろんよ。せーかも?」
「はい。やはり恭平さんに名前で呼ばれるのはとても嬉しいものです。なんと言いますか、恭平さん好きという気持ちが溢れてしまうんです」
「わかるわ。きょーへーって優しい声してるから、その優しさに包まれる感覚もあるのよね」
「それもわかります! すごく幸せな気分になるんです。…………ちら」
「本当にね。きょーへーだからこそよね。…………ちら」
え? なんかふたりがちらちらと僕を見てくるんだけど。
これはアレかな……ふたりとも名前を呼んでほしいっていうサインなのかな?
「ちら」
「ちら」
「さ、さあ早く行くよふたりとも。瀬川さんを待たせてるんだから」
僕はなんだか恥ずかしくなって名前を呼べなかった。
この新栄高校でも絶大な人気を誇る清華と、人気急上昇中の瑠美夏。ふたりの有名人とこんな話をしているのを誰かに見られでもしたら、明日から好奇の視線に晒されそうだし、誰かが来ないうちに早くここを移動しないとね。
「ちょっと! ここは名前を呼ぶところでしょ!?」
「そうです! 意地悪しないでください恭平さん」
「~~~~~~!」
僕は何も言えずに早足で校門まで向かった。
恥ずかしくなったっていうのと、もう一つ理由があるんだ。
あんな、えへえへんふんふして緩みきった表情のふたりを、他の人に見せたくない。
幸いにも、今は僕たち以外に人はいないけど、いつ来るかわからないし……こんなこと、言えるわけないよ。
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