第119話 気になるのは美少女二人の恋愛事情
でも、なんで瑠美夏はあんなに気だるそうにしてるんだろう? 今朝は「ジメジメいや」って言ってたけど別に風邪をひいてるわけじゃないのに……。
「最近小泉さんってよくコクられてるって聞いたことがあるけどマジなんかな?」
「え!?」
瑠美夏が告白されてる!? 僕、全然知らなかったんだけど……。
「わからんが、聞くところによるとその告白を全部断ってるらしい……って、上原、どした?」
「う、ううん……なんでもないよ」
「……もしかしてお前も小泉さんを狙ってんのか?」
「えぇ!?」
ど、どうしよう……話がなんだか変な方向に向かいだしたぞ。
竜太は……机に突っ伏してぷるぷると小刻みに震えている。多分笑ってるんだ。
「やめとけやめとけ。小泉さんも俺らからしたら高嶺の花だ。お前も撃沈するのがオチだから夢を見るだけにしとけよ」
「う、うん……」
良かった。どうやらこれ以上この話題は膨らまないみたいだ。
「それにしても、あの美少女ふたり、好きな人でもいるのかな?」
「それな。『聖女様』も告白は全部断っているみたいだしな。……『聖女様』はもしかしたら許嫁がいるのかもな」
「…………ぶふっ!」
竜太は机に突っ伏したまま笑いをこらえていたけど、とうとうこらえきれずに吹き出してしまった。
「さっきからどうした坂木?」
「いや、なんでもない。……くくっ」
「「?」」
その後、昼休みも残り少なくなってきたので、竜太以外のふたりは自分の席に戻っていった。
「竜太……」
「いや、悪い……。やっぱり事情を知ってる身としてはな。それにしても、クラスの奴ら、瑠美夏と柊さんが好きなのがお前って知ったらどんな反応するのかね?」
瑠美夏は人気が急上昇してるし、清華の人気は言わずもがなだ。そんな人気者二人がどちらも僕に惚れているなんて知られたら……か。
「わかんないけど、あまりいいようには思われないような気が……」
「なんにしても、お前にはそれだけの魅力があるってのを瑠美夏と柊さんはもちろん、俺だって知ってるしな」
「魅力って……」
僕に魅力なんてあるの? 竜太の方がめちゃくちゃ魅力に溢れてそうだけど……。
「家事全般が得意で何より底抜けに優しくて、困ってるやつがいたら手を差し伸べるところがお前の魅力だ。それで瑠美夏も柊さんもお前に救われたんだ。ふたりがお前に惚れるのは必然だったってわけだな」
「あのキャンプて清華と出会ったのも偶然だし、瑠美夏とも本当に決別する勇気が出なかったから……偶然だよ」
「偶然でもなんでも、二人を助けたのは事実だ。現に瑠美夏の件は、お前が君塚に頼み事をしなければ最悪の結果になっていたかもしれないからな」
「う、うん……」
あのハンバーガーショップで僕が康太に瑠美夏を気にしていてほしいと言ったから、瑠美夏がヤンキーに絡まれた時も康太が瑠美夏と一緒にいれくれた。そのおかげで最悪の事態は避けることが出来た。康太に怪我させてしまったのは申し訳ないけど、康太と二人でハンバーガーショップへ行った日、康太が僕の前に現れなかったらと思うとゾッとする。
「だからもっと胸張って誇っていいんだぞ。『僕はこのクラスの二大美少女を救ったんだ。二人は僕に惚れてるんだ』ってな」
「む、無理だよそんなの……!」
そんな自慢みたいに話したくないし、二人の想いをそんな簡単にペラペラと喋りたくない。何よりみんなは信じないよ。
「まぁそれは冗談だ。……っと、そろそろ昼休み終わるな。じゃあ俺も席に戻るわ」
「うん。それじゃあね」
竜太はひらひらと手を振って自分の席に戻っていった。
竜太から瑠美夏と清華に目線を移すと、二人は相変わらずクラスの女子グループで談笑していた。
「あ……」
すると、僕の視線に気がついた清華が僕を見て微笑んだ。
「っ!」
そんな『聖女』の微笑みを見た僕の心臓はドクンと跳ね、顔も熱くなった。
僕はすぐに目を逸らし、五限目の準備をしながら気持ちを落ち着けようとしたんだけど、先生が入ってくるまで僕はドキドキしっぱなしだった。
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