第117話 大切な2人の名を再び呼ぶ日
「もういいんだよ……ありがとう。瑠美夏」
「…………へ?」
「本当にありがとう……清華」
「…………え?」
よかった。緊張したけど、ちゃんと二人を名前で呼べた。
僕が今なら出来るかもしれないと思ったことは、二人を名前で呼ぶことだ。
二人から告白されて約三週間……二人のまっすぐな想いにずっと支えられてきた。戸惑った時もあったけど、今は二人の気持ちがとても嬉しくて、温かいと心から思う。
今の僕にはどちらかを選ぶことはまだ出来ないけど、二人の気持ちにちゃんと向き合い、僕から歩み寄ることは出来ると思ったから……だから思い切って呼んでみたんだけど、あとになって心臓がものすごくバクバクいってる。
瑠美夏のことは前から呼び捨てにしてたのに、久しぶりに呼んでみたら、今までにないくらいドキドキしてしまった。
清華にいたっては、再会してから初めて呼び捨てで呼んだけど……大人に近づいた今、本物のお嬢様を呼び捨てにして良かったのかな……といった違うドキドキも胸にあった。
僕は今、火照った顔を隠すため下を向いているんだけど、二人は今どんな表情をしているんだろう……。
気になった僕はおそるおそる、ゆっくりと顔を上げて二人を見る。
「っ!」
すると、二人は僕に名前を呼ばれたのがそれほどびっくりしたのか、目を見開いて頬はめちゃくちゃ赤くなっていた。瑠美夏は口が半開きだし、清華は両手で口を隠していた。
「き、きょーへー……あんた今、私たちの名前を……」
「き、聞き違いではないですよね!?」
「うん……。聞き違いじゃない。本当だよ。……瑠美夏」
「っ!」
「……清華」
「……!」
僕が再び名前を呼ぶと、二人はさらに頬を赤らめ、大きく息をのんだ。そして……。
「る、るみかさん……」
「せーかぁ……」
「「……う、うわあぁぁぁぁぁん!!」」
二人は抱き合って号泣し始めてしまった。
「やった……やったんだよね!? 私たち……!」
「はい……! るみかさん……わたくしたち、恭平さんの、恋する気持ちを、取り戻すことが出来たんですよ!」
「うん……! うん! やったよせーかぁ……!」
「るみがざん……!」
「「うわあぁぁぁぁぁん!!」」
その後、落ち着いた二人から色々聞いた。
僕が二人を名前で呼べなくなった時から、恋愛に前向きになれなくなったのをいち早く知った清華が、瑠美夏と協力して、僕が恋愛に前向きになるまでは友達として接して、でも、なんとか僕の恋愛に対する気持ちを取り戻そうと、二人で僕を支えようとしたことを。
それから改めて、瑠美夏と清華は僕にしてしまったことへの謝罪をしたけど、僕はもう気にしていないと言うと、それでもと言って謝ってきた。この謝罪を受け取らなかったら、いつまでも僕に謝ってきそうだったので、これでこの話はおしまい……もう言わないことを条件にして謝罪を受け入れた。
そもそも清華の件は清華が悪いわけではなく、新聞部が出した記事が悪いし、瑠美夏の件は、確かにショックを受けなかったといえば嘘になるけど、あの頃は瑠美夏は僕のことが好きではなかった……自分自身の恋心に気づいてなかったし、僕も瑠美夏の気持ちを考えず彼女に付き纏ったり彼氏アピールもやりすぎたからね。
「改めてになるけど、これからもよろしくね。瑠美夏、清華」
「うん。こちらこそよろしくねきょーへー!」
「よろしくお願いします。恭平さん!」
僕たち三人は、それぞれ拳を作り、それを三人で触れ合わせた。
いつかは二人のどちらかを選ばないといけない日がやってくる。避けることの出来ない道の先に……。
でも、まだ急いで答えをみつけるのはいいと思ってる。
今は、瑠美夏と仲良くできなかった数年間、そして清華と会えなかった七年間を埋めるため、二人ともっと仲良くなりたい。
これから、僕たちで、そしてみんなでいっぱい思い出を作っていこうね……瑠美夏、清華。
ここからはあとがきになります。
どうも。水河悠です。
「クラスの二大美少女、悪女と呼ばれていた幼馴染と、聖女と呼ばれているクラスメイトに全力で言い寄られるようになった」を読んでいただきありがとうございます。
これにて第2章終幕です。
1章で色んなことがあり、恋に前向きになれなかった恭平くんですが、ヒロイン2人が時に懸命に、時に自分のしたいこと、してほしいことに正直になりながらもずっと恭平くんを支えてきたおかげで、ついに恭平くんが恋に前向きになり、2人の気持ちにちゃんと向き合う決意をしました。
名前を呼ぶことが出来、心の距離はぐっと近づいたと思います。
さてさて、この物語は3章以降ももちろん続いていきます。
2人の恭平くんへのアプローチも激しくなり、清華さんと瑠美夏ちゃんのライバル関係も復活しますが、美少女2人は友情も厚くなります。
今まではシリアスな展開が多かったのですが、3章ではコメディ要素が多くなります!
そして、そんな美少女2人にアプローチされる恭平くんをよく思わない人も出てきて……といった内容を考えております。
ここからは毎回更新を楽しみにしている方々に残念なお知らせをしなければならないのですが、現在2日に1回の更新なのですが、誠に勝手ながら、3章からは不定期更新にさせていただきます。
このあとがきを書いている現在では、3章はある程度書けているのですが、途中の展開を変更している最中なので、大変申し訳ないのですが、2日に1回の更新が難しくなったため不定期更新になります。
めっちゃ日を開けての更新っていうのはなるべくないようにしていこうと思っておりますので、皆様、引き続きご覧いただけたら幸いです。
それでは第3章もお楽しみに。
水河悠でした!
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