第114話 残り5秒、ボールは恭平の手に……
僕のパスから試合が再開され、竜太がボールをドリブルして相手コートに走る。
これがラストプレーだ。ここで決めないと僕らの負けがほぼ確定してしまう。
あ、竜太のマークがバスケ部員二人に戻ってる。
「ここまで消耗してたら、俺たちだけで十分だ。あとの三人はあのチビ以外につけさせときゃ、俺たちに負けはねぇ!」
「くっ!」
竜太は今、スリーポイントラインより内側にいるけど、徹底マークされてるからシュートが打てない。
竜太がドリブルをやめて、ボールを手に持った。
「これでお前はパスするしかなくなった! お前の負けだ坂木!」
その時、竜太が後ろにいる僕をチラッと見た。
「っ!」
ここだ……ここしかない!
僕は前進し、スリーポイントラインの内側……竜太から少し離れたところに走った。
あ、竜太がゴールをキッと睨み、シュートモーションに入った。
「「打たせるか!!」」
竜太のモーションと眼差しで、シュートを打つと確信した二人は高くジャンプして竜太のシュートコースを塞いだ。
「ばーか、違ぇよ!」
竜太はニヤリと笑うと、僕に向けてパスを出した。
来た! ついに……この土壇場で僕にパスが回ってきた。
残り時間五秒……これが本当に最後のプレーだ。
「構うな打たせろ! どうせ入らんからリバウンドに集中しろ!」
「上原、無理すんな! 坂木に戻せ!」
敵味方それぞれからそんな言葉が飛んでくるけど、竜太のマークは依然として厳しいままで、パス練習をほとんどしていない僕がパスをしたらカットされてしまうだろう。
だからと言って残りの時間で他のみんながシュートを決めれるかと言われたら無理だ。
だから……僕がやるしかない!
「決めろ恭平!!」
大丈夫……練習を思い出すんだ。
竜太も、康太も……瑠美夏も清華さんも……あれだけ僕の練習に付き合ってくれたんだ。
全てはこのクラスマッチ……いや、この一投のため!
だから……絶対に決める!
「きょーへー!」
「恭平さん!!」
二階から瑠美夏と清華さんの、僕を呼ぶ声が聞こえた。
その瞬間、心臓がドクンと強く脈打ち、一切の雑念が消え去った。
不思議な感覚だ。……ゴールだけがはっきりと見える。
僕は腰を落とし、膝を曲げ、ボールを構えてジャンプし、最高到達点になったと同時に手からボールを離し、シュートを打った。
ボールが空中に放たれた瞬間、試合終了のホイッスルが鳴ったが、直前に手を離したのでこのシュートは有効だ。
ホイッスルが鳴った瞬間、コートに立っていたみんなが落としていた腰を上げかまえを解き、ただじっとボールを目で追っていた。
「お前らの敗因はな……」
だけど、竜太だけは違っていた。
まだボールが宙を舞っているのに、そばにいたバスケ部員に向けて敗北宣言をしていた。
竜太の言葉が後ろから聞こえて、相手のバスケ部員二人はゆっくりと顔だけ竜太に向ける。
「俺の幼馴染を……甘く見たことだ」
「「っ!?」」
竜太がそう言い放ち、相手のバスケ部員が再びゴールに視線を戻した直後、僕の放ったシュートはリングにかすることなく、ゴールに吸い込まれるように入った。
「試合終了! 二十三対二十二で、勝利クラスは───」
試合は、僕のブザービーターで、僕たちのクラスが勝利を収め、これにより一年生は男女ともに僕のクラスが優勝を果たした。
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