第113話 男子の決勝戦

 クラスマッチ、一年男子の決勝がいよいよ始まった。

 決勝の相手は、さっきの女子同様、バスケ部員が二人もいた。

 かたやこちらのクラスには、僕と竜太、そして他の運動部に所属する三人の計五人。

 やはり竜太が驚異とわかっている相手は、センターコート付近で竜太に対して二人がかり……ダブルチームって言うんだっけ、とにかく徹底マークしていた。

「お前らいいのかよ? 俺にダブルチームしちまっても?」

「元々俺たちでお前をマークするつもりだったんだよ! お前は別格だし、外からも打てるからな! 逆に言えば、お前さえ封じ込めちまえば俺たちの勝ちだぜ坂木」

「だな。バスケ部はお前しかいないし、他は烏合の衆……というか、一人はそれ以前の奴がいるしな」

 相手のバスケ部員の二人は僕を見てニヤニヤしていた。

 そんな隙を竜太が見逃すはずもなく、目線が自分から外れた一瞬で二人を抜き去りスリーポイントシュートを決めた。

 竜太がシュートを決めると、試合を見ていた女子生徒からの歓声が湧き上がった。

「坂木くんカッコイイー!」

「そんなヤツら倒しちゃってー!」

 などなど、相手を煽るような声援を送る人もいる。

「俺相手に余所見なんて、随分余裕じゃん?」

「くそ! あのチビはやはり油断させるためか! コスい手使いやがって!」

「だが、そんな手は二度と通用しないぞ!? あのチビはマークする必要がないってわかったからな、心置きなくお前をダブルチームで削れるぜ!」

 相手は竜太に不敵な笑みを浮かべている。

 現在の得点は十五対十でこちらが五点リードしていて、残り時間は五分。

 このまま逃げ切れば僕たちが勝てるけど、竜太もここまでの二試合でかなり消耗しているはず……。

 そこにあのダブルチームだ。かなり無理してるのは明白だけど、竜太はそれを顔に出さずにこちら側のコートに戻ってきた。

「せいぜい恭平を舐め腐ってろよ……今に後悔するからよ」

 竜太は誰にも聞こえない声量でそう呟いていた。近くにいた僕だけが聞こえていた。

 試合は進み、残り時間三分で二十一対十八とワンゴール差に追いつかれていた。

 竜太をさらに追い込もうと、相手クラスは竜太をマークする人数を一人増やした。

 三人目はバスケは授業でしかしたことがないと言っていた人だけど、サッカー部に所属しているため運動神経がよく、消耗している竜太を追い詰めるには十分だった。

 竜太のボールがスティールされ相手に渡り、速攻で着実に二点をものにしているのに対し、僕たちのクラスも、相手のディフェンスが竜太にほぼ集中しているため、竜太と僕以外がシュートまで持っていくんだけど、やはりゴールリングに嫌われて得点にはいたらない。

 相手のバスケ部員がすかさずリバウンドを制し、また速攻をしかけて得点を加算する。

 残り時間三十秒で、ついに僕たちのクラスは逆転を許してしまった。

 三人のディフェンスに、さすがの竜太も体力の限界が来ているのか、すごく息が上がっていた。

「へっ、どうやらこの勝負、俺たちの勝ちみたいだな」

「同じバスケ部の俺たち二人相手によく粘った方だよ坂木。マジで敵に回すと恐ろしいよお前は」

「はぁ……はぁ……ふっ」

 竜太は額の汗を腕で拭っていたけど、その口は笑みで吊り上がっていた。

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