第111話 湧き上がる闘志

「はぁ……はぁ……ん? ……あ」

 クラスマッチ決勝戦、私たちのクラスはかなり劣勢だった。

 ここまで二戦して、大活躍だったせーかもあきらかに疲れていて、息もかなり上がっている。

 他のみんなも、もう無理だよとか言っているけど、私もそう思っちゃいそうだけど、でもあれだけ練習して、みんなも瀬川さんも協力してくれたんだ。最後まで諦めたくない!

 なにかない!? こっちの切り札のせーかを燃え上がらせるようななにかは?

 そう思って体育館の二階、私の正面を見ると、きょーへーとリュータがいた。

 あのふたり、応援してくれたんだ。

 そこで私は気がついた。きょーへーが私たちに向けて拳を向けていることに。

 そうよ。きょーへーが……大好きなきょーへーが応援してくれているんだ。これ以上無様な姿は見せられない!

「せーか!」

 私は大声で隣にいるせーかを呼んだ。

「はぁ……はぁ……る、瑠美夏さん?」

「二階を見て」

 疲れているせーかは、私が突然声を出したものだから驚いていたけど、今はそれどころじゃない。

 きょーへーが見てて、私たちを応援してくれている。それがわかればせーかは絶対に復活する!

「二階、ですか? …………あっ」

 せーかがきょーへーを見た。これで───


 瑠美夏さんがわたくしを大声で呼んだ時は驚きましたが、瑠美夏さんに言われて二階を見ると、そこには坂木さんと……恭平さんがいました。

 見ると、恭平さんはわたくしたちに拳を向けられていて、それはまるでわたくしたちにパワーを与えてくれているような……そんな気さえしてきます。

 いえ、実際にパワーを貰ったのでしょう。

 わたくしも半分ほど負けを意識していたのですが、何故でしょう……恭平さんに応援されていると思うと、わたくしの中から力が湧いてくるようです。

 この間にも相手に十一点目が入ります。

 あと四点で負けてしまうというのに……不思議、先程まであった焦りが嘘のように消えて、今は高揚感に満ちています。

 わたくしは大きく深呼吸をして、それから恭平さんに向けて拳を出しました。瑠美夏さんも同様です。

「なに? さすがの『聖女様』も諦めたの?」

 そんな言葉が相手のバレー部員の方から聞こえますが、逆です。

「みなさん!」

 わたくしは自分のうしろにいる四人に声をかけます。

「この勝負、勝ちます!」

 わたくしがそう言うと、みなさんはぽかんとして、相手コートからは嘲笑が聞こえてきました。

「何言ってるの『聖女様』? いくらあなたでもこの点差はひっくり返せないでしょう?」

 今はクラスメイトの方を向いているので、相手の方がどんな表情をしているのかはわかりませんが、わたくしの言ったことが戯言だと思っていそうですね。

 なら、わたくしは言います。言ってやります。

 わたくしはゆっくりと身体を回転させ相手の方を見ます。

「今のわたくし達を簡単に倒せると思わないでください。勝負は……ここからです!」

「っ!?」

 身体の奥から気力が、そして闘志が湧き上がっています。

 マンガの主人公のようなセリフを言ったわたくしの顔は、きっと不敵な笑みを浮かべているのでしょうね。

「私もやるわよせーか! あいつが見てるんだもの……このまま負けるなんてまっぴらよ!」

 わたくしだけでなく、どうやら瑠美夏さんにも火がついたみたいです。

 さっきまでのお疲れ気味な表情が嘘のよう……わたくしと一緒で、すごく闘志に満ちたいい笑顔をしています。

「一緒に倒しましょう瑠美夏さん。あの方の応援を受けた今のわたくしたちは無敵です!」

「ええ! やってやりましょうせーか!」

 さっきも言いましたが、ここからが本番ですよ!

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