第110話 クラスマッチ当日、女子の決勝戦

 それからの日々はあっという間で、ついに学年別クラスマッチの日がやってきた。

 あれから約二週間、僕は瑠美夏と清華さん、そして康太に付き合ってもらいながら練習を続けていた。竜太は部活が忙しいので、部活が休みの日には必ず付き合ってくれた。

 ドリブルよりもシュート練習を重点的にこなして、確率も三回に一回は入るようになってきていた。これも竜太と康太のアドバイスのおかげだ。

 竜太の活躍で、僕たちのクラスは無事に決勝まで駒を進めた。僕はまだ一度も試合には出てなくて、決勝に出ることとなる。

 練習したとはいえ、大事な決勝のメンバーに僕を入れて大丈夫なのかな? クラスメイトからもちょっと反対意見が多かったし。

 まぁ、とにかく選ばれたからには自分に出来る精一杯のことをしよう。具体的に言うと、パスが来たら竜太に繋げる。


 そして今は女子の種目……バレーボールの決勝を二階から竜太と一緒に観戦している。

 決勝戦は僕たちのクラスが残っていた。清華さんが中心となってチームプレーでここまで勝ち上がってきた。

 観戦している男子からは、「『聖女様』のポニテヤバくね?」など、清華さんのポニーテール姿を絶賛する声があちこちから聞こえてきた。

 一方の対戦クラスは、バレー部員が二人もいて、その二人を中心に……というかほとんどその二人しか動いてない状態で、持ち前のスキルでここまで突破してきたみたいだ。

 その実力はやっぱりすごくて、スコアは十対五とけっこう離されていた。

 時間の都合上、試合はワンセットの十五点先取で勝敗が決してしまうので、あと五点取られたら負けてしまう。ちなみにデュースはないみたい。

「ちょっと厳しいな……」

「だね。相手にバレー部員が二人もいるのがキツいね」

 その種目の部員は二人までコートに立てるというルールがあるから、反則ではないのだけど、これでは勝つのはかなり厳しい……。

 あぁ……また相手に点が入ってしまった。清華さんが必死にボールを拾おうとしたけど、あと少し届かなかった。

 清華さんも瑠美夏も、息が上がっている。ここまでなの?

「恭平。お前、あの二人を応援しろよ」

「え?」

「お前の応援があれば、瑠美夏も柊さんも気力を取り戻すだろうからな。ほら!」

 竜太が僕の背中を少し強めに叩いた。

 ……僕の応援で、本当に二人は頑張れるのだろうか? そう思った僕の頭の中に、この二週間の練習の日々を思い出す。

 竜太と康太の練習は確かにしんどいものだったけど、それでも瑠美夏と清華さんは、自分たちの練習のあとは僕をずっと応援してくれて、あの公園の時みたいに手伝ってくれた。

 清華さんと瑠美夏がいてくれたことで、僕が練習を頑張れたことも事実だ。

 逆に僕も二人の練習は見て、サポートもしたけど、そこまで大したことはしていない。

 もし、本当に……僕の応援で、二人が闘う力を取り戻し、この戦局を覆すことができるのなら……二人の力になれるのなら……僕は…………。

 僕は自分の右手を前に出し、拳を作ってそれを二人に向けた。

 これは特訓の最中、みんなでクラスマッチ頑張ろうという意味を込めて、みんな拳を出しあっていた。

 それぞれの拳に触れずに、ただ向かい合わせるだけの行為。

 発案は康太で、最初こそ瑠美夏が不満そうにしていたけど、いざやってみるとみんな気に入ったようで、練習が終わるとこうやってみんなで拳を合わせていた。

 お願い。ふたりともこっちを見て…………!

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