第108話 恭平の親友ポジションをかけた戦い

「恭平お前、瑠美夏に何かしたのか?」

「えっ!?」

 竜太の一言で、僕は自分から瑠美夏に『あーん』をした時のことを思い出してしまい、顔が赤く、心臓もすごくドキドキした。

「その反応は、何かしたんだな?」

「う……」

 動揺していて咄嗟の言い訳が思いつかなかった僕は、何も言うことが出来なかった。

「なんだなんだ? 小泉に何したんだ?」

 康太も混ざってくるものだからさらに困った。これは……言わないとダメなパターン?

「……まぁ、瑠美夏の反応からして、嫌がることはしてないみたいだし、関係が少しは進展してるとみて良さそうだな」

「そ、そう……だね。うん」

 間接キスは一歩なんだろうか? 手を繋いだこともないから二歩も三歩も先に進んだ感がいなめないけど、本当のことを言ったら竜太も康太もさらに追求してきそうだから黙っていよう。

「気になるけど、無理やり聞くものダメだしな。それより坂木」

「なんだよ?」

 康太は手に持っていたバスケットボールを少し強くパスをして、竜太はそれを両手で受け止めた。

「1on1、しようぜ? 『ミニバスの神童』の実力を見てみたい」

「……そのあだ名、久しぶり呼ばれたわ。いいぜ、向こうのコートでやろうぜ」

 竜太は康太に不敵な笑みを浮かべ、竜太の後ろにある、少し離れたバスケットゴールがある方を親指で指した。

「おっしゃ! 恭平の練習に付き合うのもそうだが、もう一つの目的も果たせて嬉しいぜ。俺が勝ったら恭平の親友ポジは俺な」

「……あ?」

 康太が変なことを言うから、向こうのコートへ歩き出していた竜太が立ち止まり、僕たちの方を振り返って康太を威嚇していた。

「え? え?……」

 僕の親友ポジションって、そんな争うほど重要なポジションなの?

 というより、僕は竜太はもちろんだけど、康太だって竜太と同じくらい大切な友達だと思ってるのに。

「ふ、二人とも落ち着い───」

「口を出さないでくれ恭平。どうやらこいつにはわからせる必要があるみたいだな……誰が恭平の一番のダチなのかを。幼馴染に勝てると思ってんのか?」

「確かに付き合いの長さでは勝てないけどな、やらかした俺をダチって言ってくれた恭平を大事だと思ってる気持ちはお前にも負けねーよ」

 やらかしたって……瑠美夏と一緒に帰ってきたあの日のことを言ってるのかな? もう気にしなくていいのに。それ以前に争う必要もないのに。

「そこまで言うなら全力でお前を倒す! 恭平はそのままシュート練習をしていてくれ」

「ち、ちょっと竜太!? 康太!? ……行っちゃった」

 再度思うけど……僕の親友ポジションって、そこまで重要なのかな? 本人からしたらいまいちピンとこない。

 僕からしたら竜太や康太が友達でいてくれているのが嬉しいんだけどな。

 あ、試合が始まった。どうやら最初は康太が先攻のようだ。

 一つのゴールで勝負する場合、相手にボールが渡ってしまったらその時点で攻撃終了。攻守交替でゲーム再開となるって竜太から聞いたことがあるけど、どっちが勝つのかな?

 竜太は両手を広げ、腰を落として康太のどんな攻撃にも対処できるようなディフェンスをし、康太は攻撃のスキを伺っているのか、ボールを地面につきながら、じり……じり……と距離をつめている。

 あ、康太が右側から突破しようとしたけど、竜太はそれをブロック。

 でも康太は右足を軸に身体を一回転させ、今度は逆の左側から抜こうと試みる……抜いた!

 すごい、康太も全然引けをとっていない。

 そのままゴールに向けてドリブルを続ける康太と、全力でそれを追う竜太。康太が勝つのかな!?

 康太がそのままレイアップシュートの体勢に入り、ジャンプし手からボールを浮かせた直後、横から竜太の手が伸びて康太のシュートを打ち落とした。

 そのまま竜太が僕の方に転がってきたボールを拾い上げ、惜しかったけど康太の攻撃が終わってしまった。

「恭平はそのままシュート練習してろよ」

「う、うん……」

 竜太は少し離れたところからそれだけ言うと、康太の方に走っていった。今度は竜太の攻撃で再開するようだ。

 それにしても、さっきの攻防は凄かったなぁ……。

 竜太はもちろんだけど、康太もめちゃくちゃ上手い。今はバスケやってないのかな?

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