第104話 再来週はクラスマッチ

 夕食も終わり、僕と瑠美夏は後片付けをしていた。僕が食器をキッチンまで運び、瑠美夏が食器を洗っている。

 本当はその役割分担は逆にするはずだったのに、瑠美夏が「私にやらせて」と、まるで譲る気がなかったので瑠美夏にお願いをした。

 食器をキッチンに持っていった時に、瑠美夏の様子を見るんだけど、ぎこちない手つきではあるけど、しっかりと洗剤を食器全体に満面なく広げている。

 僕はなんだか嬉しくなりながら、残りの食器を運ぶためにテーブルに行こうとした時、後ろから瑠美夏が声をかけてきた。

「そういえば、再来週はクラスマッチがあるわね」

 クラスマッチ……スポーツで競う男女別のクラス対抗戦だ。

 男子はバスケットボール、そして女子はバレーボールだ。

「だね。……僕は運動はあまり得意じゃないからなぁ」

 身長百六十五センチで、以前立山という瑠美夏をさらったヤンキーのボスが言った通り、ヒョロヒョロの僕は、スポーツ全般が得意ではない。

 運動音痴というわけではないんだけど、言ってしまえば平均以下だ。

 竜太にも「バスケやろーぜ」と何度も誘われたけど、それに応じたのは数えるくらいしかなく、見学にまわっていた。

「きょーへーは運動にがてだものね。確か男子はバスケだっけ?」

「うん。竜太の独壇場になりそうだね」

 康太曰く、竜太は小学生の頃、『ミニバスの神童』と呼ばれていたみたいで、確かに当時から竜太は他のみんなより群を抜いて上手かった。

 今もバスケに打ち込んでいる竜太が活躍しないわけはない。

「それなんだけど、『バスケはチーム競技だから、俺だけでは勝てない。今回は恭平にも活躍してもらう』ってリュータが言ってたわよ」

「えぇっ!? む、無理だよ! 身長も体格もない僕が活躍って……活躍どころか、逆に竜太やクラスのみんなの足を引っ張ってしまうよ」

 クラスマッチでは、全員かならず一試合は出ないといけないというルールがある。だから、どこかのタイミングで、僕も出場するようになるんだけど、僕は初戦に出てみんなの邪魔にならないように立ち回り、パスが来たら竜太に回すくらいの軽い気持ちだったのに……何を考えてるんだよ竜太。

「私も詳しくことは聞いてないんだけどね。リュータから連絡が来ると思うけど、日曜日に練習するからコータも呼んどいてほしいって言ってたわよ」

「康太まで!? ……あ、そっか。康太もバスケやってたんだよね」

 竜太だけじゃなくて康太まで呼び出すなんて……これは思ったより本格的になるかもしれない。

「私もきょーへーが活躍してるとこ見たいから、日曜日もクラスマッチ当日も全力で応援するわね」

「ご、ご期待に添えれるかわからないけど頑張ってみるよ。……そっちは大丈夫なの?」

 名前を呼ぼうと頑張ってみたけど、まだダメみたいだ。焦っても仕方ないのはわかってるんだけど、待たせていると思うとどうしても気がはやってしまう。

「女子もなんとかなると思うわ。なんたってこっちには運動神経抜群の柊さんがい…………」

「?」

 どうしたんだろう? いい切る前に瑠美夏の声が消えてしまった。

 確かに清華さんは文武両道を地で行く人だ。彼女がいればそうそう負けることはないと思うのは僕も同じだけど、瑠美夏は違うのかな?

「柊さんにばっかり活躍……ううん、頼るのはやっぱりダメ。私も練習するわ!」

「ど、どうしたのいきなり?」

 突然瑠美夏が燃えだした。あれ? 瑠美夏って学校行事にこんなに積極的になる性格だったっけ?

「私が活躍する場面をきょーへーに見てほしいから!」

「な、なるほど……」

 頑張るのはどうやら僕のためらしい。嬉しいけど、なんか照れるな。

「問題はどこで練習するか、なんだけど……」

「なら瀬川さんに頼んでみるとか」

 個人的なイメージだけど、バレーボールって一人だと練習しにくいし、広い場所が必要なきがする。

 瀬川さんはなんでも出来そうだし、柊家なら体育館ぐらいの広さの施設を持ってそうだから、瀬川さんに頼むのがうってつけだと思った。

「柊さんのお付きの人よね? ……前に柊さんに酷いこと言っちゃったから、瀬川さんも根に持ってるかも……」

「多分大丈夫だと思うけど……頼むだけ頼んでみようよ」

「わかったわ。ありがとうきょーへー」

「うん」

 そんな話をしているうちに片付けは終了。僕は小泉家をあとにして隣にある僕の家へと帰った。

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