第7話 『悪女』は計画を実行する①

 翌日、僕は昨日と同じ五時半に起床して、いつもの様に瑠美夏と自分の二人分の朝食と勉強を作り、家を出て学校で授業を受けた。

 あまり眠れてないので欠伸がすごく出たけど、瑠美夏の為と思うと全く苦にならない。

 あっという間に放課後となり、僕は部活が休みの竜太とつい話し込んでしまってスーパーに行く時間が遅れた。

 学校からスーパーに直行して、カートを引きながら今日の夕飯は何にしようかと考える。

「遅くなってあんまり時間ないし、今日はカレーにしよう」

 そう決めて、僕はカレールーとカレーに使う野菜とお肉、そして明日のお弁当に入れるおかずをカゴに投入し、レジで会計を済ませて急いで家に向かった。

 うちの両親は父親の仕事の都合で遠くに住んでいるから、僕は一人暮らしのため、毎月仕送りしてもらっている。

 その為食材を買う為のお金もそれなりに貰っているので不自由なく過せている。

 これといった趣味はない(あえて言うなら家事スキルで瑠美夏を支えるのが趣味)ので、小遣いをほとんど生活費に回して、余ったら貯金している。

 いつもは帰宅して自分の家に入り、手洗いうがいをして瑠美夏の家に入るのだが、今日は直で瑠美夏の家に合鍵を使って入った。

 そこで手洗いうがいをしっかりして、僕は夕飯の準備に取り掛かった。

 程なくしてカレーが完成。瑠美夏は辛いのが苦手なので甘口だ。

 他にサラダの盛り合わせと惣菜コーナーで買った唐揚げを置いて完成。

 唐揚げはいつも下準備をして自分で揚げて作るけど、今日は帰宅するのが遅かったので惣菜にした。

 瑠美夏は少し不満に思うかもしれないけど許してもらおう。

「それにしても、瑠美夏遅いな」

 時刻を見ると、既に夜の七時を過ぎていた。

 いつもならとっくに帰ってきて二人でテレビを見ながら夕食を食べてる時間なのに、今日はどこか寄り道でもしてるのかな?

 テレビをつけると、男性アイドルが司会のバラエティ番組が映って、ゲストの芸人さんが爆笑をとっていた。

 僕は瑠美夏に【夕飯出来てるよ。早く帰ってきて一緒に食べよ】とメッセージを送ってテレビを見た。

 しかし、三十分経っても返信どころか既読にもならず、番組の内容も入ってこなくて、心配の色が濃くなっていった。

 まさか、何か事故や事件に巻き込まれたんじゃ……!?

 そう思うと一気に焦りだし、僕は慌てて瑠美夏に電話をかける。

 しかし、呼び出し音が何コール繰り返そうが、瑠美夏が出る気配はない。

 瑠美夏を探しに行こうと思い、席を立ったその時、玄関からガチャっと音がした。

 どうやら瑠美夏が帰ってきた様だ。

 僕はそれで安堵して一度席に着き直してから再度立ち上がり、カレーを温め直すためにキッチンへ向かった。

『やだも~』

 瑠美夏の楽しそうな声が廊下から聞こえてくる。

 どうやら友達と電話で喋りながら歩いてきているようだ。

 そう思っていると……。


『良いだろここでしても』


 廊下から男の声も聞こえてきた。

 その声を聞いた僕は、カレーを掻き混ぜていた手をピタッと止めた。

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