第6話 『悪女』は計画実行を決意する
スーパーで食材を買った僕は、早速夕食の準備に取り掛かった。
確か冷蔵庫に豚肉があったはず、そしてさっきスーパーで玉ねぎも買ってきたから……。
今日は豚の生姜焼きにしよう。
瑠美夏も結構好きなメニューだし。
サッと豚の生姜焼きを作り、それだけでは寂しいのでサラダも作った。
料理が完成してテーブルに置いて時計を見る。
時刻は夜の七時。春とはいえ、四月の下旬なのでもうほとんど日が沈んでいる。
瑠美夏はまだ帰ってこない。まぁ、今に始まったことではないけど、やっぱり心配になる。
瑠美夏は中学から、帰りが遅くなる事がしょっちゅうある。
心配しても「あんたには関係ない」の一点張りで、メッセージを送っても既読はつくけど返信はない。いつもこんな調子だ。
正直に言うと、遅く帰るのは改善して欲しいところだけど、それでもちゃんと帰ってきてくれる。
そんな事を思っていると、玄関のドアが開く音がした。瑠美夏が帰ってきたんだ。
瑠美夏はリビングには入らず、真っ直ぐ二階にある自分の部屋に行ってまず着替えをする。
着替えを終えると、洗濯物をカゴに突っ込んでからリビングに入ってくる。
「おかえり瑠美夏」
「ん」
挨拶の代わりに僕にお弁当箱を渡してくるので、僕はそれを受け取る。
「今日も遅かったね。何してたの?」
「あんたには関係ない」
いつものやり取りだ。まぁ、わかってたけどね。
瑠美夏はテーブルにつくと、黙々とご飯を食べ始めた。
僕は先に瑠美夏の弁当箱を水につけてから、瑠美夏の対面の席に座る。
「今日の数学の宿題も、瑠美夏の字に似てたでしょ?」
「ん」
「先生にバレてないみたいだし、今日も大好きな瑠美夏の役に立てて嬉しいよ」
「……」
「それに、今日もお弁当を残さず食べてくれたから凄く嬉しい。いつも食べてくれてありがとう。瑠美夏」
「…………」
瑠美夏は黙々と食べ続ける。
表情は変わらないけど、それでも食べてくれるのは、きっと僕の料理が瑠美夏の口に合っているからだ。
今日も瑠美夏好みの味付けに出来て大満足だ。
瑠美夏は食べ終えると、そのまま自室に戻って行った。
遅れて僕も食べ終えたので、食器を流しに持っていき、それを洗う。
食器を洗い終え、乾燥機のスイッチを入れた後、僕は明日の分のお米を研いで炊飯器にセット、早朝に炊きあがるよう予約を入れる。
その後に、明日の朝食と、お弁当に使う材料の仕込みを行う。
時刻は午後九時半。
洗濯物は……あまり溜まってないから明日でいいや。
僕は階下から瑠美夏に帰る旨を伝える。
瑠美夏からの反応は無かったけど、伝わっているはず。
僕は自宅に戻る。ここからは僕の家の家事をする。
両親は父親の転勤で母もそれについて行ったのでその家にはいない。僕は一人暮らしだ。
といっても、家事は出来るから何の支障もないけどね。
まずはお風呂場を軽く掃除して湯船にお湯をはる。
その間に弁当箱を洗い、さっき瑠美夏の家でやったように、米を炊飯器にセットし、明日の朝食と弁当の材料の仕込みを済ませる。
そしたらちょうど『お風呂が沸きました』と、音声が聞こえてきたので、僕はお風呂に入る。
入浴を終え、さっぱりした後に時計を見ると、時刻は午後十一時になっていた。
これから自室に行き、寝る……のではなく、今日授業で出た宿題と、予習復習を行う。
瑠美夏に相応しい男になるように、勉強も手を抜いたりしない。
睡魔が襲って来たので、ここでまた時計を見ると、日付はとっくに変わっていて、午前二時を過ぎていた。
「今からなら三時間以上は寝れるな」
ちょうど勉強もキリがいい所だったのでここまでにして、僕はベッドに入った。
私、小泉瑠美夏は、家が隣のあいつが作った夕飯を食べ、自室でベッドに横になってスマホをいじっていた。
はぁ……もう無理。明日、アレを実行しよう。
私が計画しているある作戦に協力してくれる奴に、そんな旨のメッセージを送った。
明日、あいつがどんな表情をするか今から楽しみ♪
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