第2話 上原恭平の朝のルーティン

 ピピピピピ!

 僕のスマホからアラーム音が鳴り響く。

 現在の時刻は午前五時半。

「んん~~~!」

 僕はベッドから降りて背伸びをして、身体と脳を完全に覚醒するよう促す。

「よし!今日も頑張りますか!」

 そうして僕はパジャマから学校の制服に着替えて、幼馴染が住んでいる隣の家に向かった。


 僕の大好きな幼馴染、小泉瑠美夏から預かっている合鍵を使って、小泉家の玄関をそ~っと開ける。

 この時間は当然ながら瑠美夏はまだ夢の中。

 大きな物音をたててしまえば、瑠美夏の睡眠を妨害してしまうことになる。

 そんな事は出来ない。やっぱり好きな人には健康でいてほしいから睡眠は充分にとって欲しい。

 僕は小泉家の冷蔵庫を確認する。食材は沢山あった。

 普段家にいない瑠美夏のお母さんだけど、たまの休みにはスーパーで色々買い込んでいるみたいだ。

 瑠美夏から、冷蔵庫の食材は自由に使っていいと許可をえているので、まずは朝食を作ることにした。

 IHのコンロのスイッチを入れ、フライパンに油を敷き温める。

 温めている間に卵を割り、それをよくかき混ぜてからフライパンに投入する。

 卵を程よくかき混ぜて、ふわとろのスクランブルエッグを作った。

 スクランブルエッグは瑠美夏の好物だ。これを食べて「美味しい」と言ってくれるのが僕の朝の楽しみだ。

 キャベツの千切りとプチトマトを二つ、スクランブルエッグと同じお皿に乗せる。

 そしてスープを作る。

 スープを火にかけている間にお弁当作りを開始する。

「今日は定番のおかずにしようかな」

 そう言って僕は、卵焼き、鶏の唐揚げ、たこさんウィンナー、デザートにリンゴを入れてお弁当のおかずを完成させる。

 炊飯器を開けると、昨夜から今の時間に炊きあがるように予約しておいたので、炊きたてのいい匂いが鼻腔を刺激する。

 瑠美夏のお弁当箱にご飯を盛り付けたら今日のお弁当の完成。

 時刻は午前六時半。

 そろそろ瑠美夏を起こす時間になってきたので、スープを温め直す。

 いい感じの温度になったら、食パンをトースターにセットして瑠美夏の部屋に向かう。

 瑠美夏を起こす。これも僕の朝の日課だ。

 僕は瑠美夏の部屋のドアをコンコンとノックする。

「瑠美夏、朝だよ。起きて」

 呼びかけると、少しして「ん~」と気の抜けた声がした。

 どうやら起きてくれたようだ。

 これで起きなければ瑠美夏の部屋に入り、もっと直接的な起こし方をしないといけないのだけど、僕は瑠美夏から「私の部屋には入らないで」と、きつく言われているので、起きてくれるか毎回ドキドキする。

 返事が返ってきたのを確認すると、僕はまたリビングにおりて、スープと食パンを別々のお皿に乗せて瑠美夏を待つ。

 少しして瑠美夏がリビングに降りてきた。

 まだ眠いのか、欠伸をしながら目を擦っている。

 肩まで伸びたブラウンの綺麗な髪、少しつり目で整った顔立ち。

 スタイルも良くて、細身で身長は百六十センチで、僕と五センチしか違わない、学年で一、二を争うほどの美少女だ。

「おはよう。瑠美夏」

「ん~。はよ」

 これもいつものやり取りだ。

 瑠美夏はゆっくりと自分の椅子の前に来たので、僕は椅子を引き、瑠美夏を座らせる。

「さぁ、冷めないうちに食べてね」

「ん」

「食べたら食器は置いておいて良いからね」

「……」

 そうして僕は自宅に戻って自分の朝食と弁当を用意した。

 瑠美夏からは『弁当のおかずは私とは別にして』と言われているけど、そもそも入っている食材が違うから、おかずが被ることは滅多にないけど、瑠美夏の機嫌が悪くなるから注意をはらっている。

 僕は一度自分の家に戻り、朝食を急いで食べて、食器を洗い、教科書や弁当箱をつめた鞄を持って再び瑠美夏の家へ。

 リビングに行くと瑠美夏はいなくて、どうやら自室に戻っているようだ。

 テーブルに置いてあった食器をシンクに持って行って綺麗に洗っていると、瑠美夏が登校する為家を出ようとした。

「行ってらっしゃい瑠美夏。また教室でね。大好きだよ」

「…………」

 瑠美夏は学校指定のローファーを履いて登校して行った。

 僕は中学に上がったときから瑠美夏と一緒に登校したことは一度もない。

 僕と一緒に登校していて周りにからかわれるのが嫌みたいだ。

 付き合ってからもそれは変わらず、恋人関係だけど一緒に登校していない。

 まぁ、家が隣同士だからいつでも会えるから気にしてないけどね。

「おっと、早く食器を洗わなきゃ!」

 手早くしっかりと食器を洗って、食器乾燥機にかけてから僕も学校に向かった。

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