クラスの二大美少女、悪女と呼ばれていた幼馴染と、聖女と呼ばれているクラスメイトに全力で言い寄られるようになった

水河 悠 (みずかわ ゆう)

第1章 僕が2人に言い寄られるようになるまで……

第1話 プロローグ

「はぁ、はぁ、……くっ!」

 高校一年生の僕、上原うえはら恭平きょうへいは自宅の玄関を勢いよく開け、靴も適当に脱ぎ捨てて二階にある自分の部屋に向かって走っていた。

 部屋の扉も乱暴に開けて、学生鞄も放り投げて、僕はベッドに飛び込み、枕に顔を埋めた。

 何で、何であんなことしてるんだよ!

 さっき、隣の家で起きた出来事が目に、そして脳にこびりついて離れない。

「何で……どうしてなの……ぐすっ」

 隣の家には僕の幼馴染の女の子が住んでいる。

 物心ついた時からいつも一緒に遊んで、一緒に育ってきた。

 中学に上がり、彼女への恋心を自覚した僕は、彼女の為に家事を覚えることにした。

 母親から料理、洗濯、掃除、あらゆる事を教わり、とにかく彼女の為に何でもしたいと思って一心不乱に母から教わった事を吸収していった。

 僕の大好きな幼なじみ、小泉こいずみ瑠美夏るみかの両親は数年前に離婚し、今はお母さんと暮らしている。おばさんはかなりの仕事人間で、家に帰ってくるのも日付が変わる前とか、日によっては家に帰らない日もざらにある。

 瑠美夏はそれでも両親の不満などは言わなくて、それで僕は大好きな幼なじみの力になりたい一心で、覚えた家事を瑠美夏の為に存分にふるった。

 そして中学三年の時に瑠美夏に告白した。

 そしたら瑠美夏は「あー、うん」と言った後に「じゃ、どうするの?」と言ったので、僕は「付き合おうよ!」と即答して、そうして僕達は付き合いだした……はずだった。


 それなのに、瑠美夏は今日、男と一緒に帰ってきた。



「何で……僕達は付き合ってるんじゃなかったの?」

 僕の口からそんな言葉が出るけど、その答えを持っている幼馴染は隣の家にいる。

 瑠美夏に聞けば答えてくれると思うけど、今は瑠美夏に会うのが怖い。

 もし、僕が思っている通りの言葉を言われたら、ショックで立ち直れる気がしない。

 瑠美夏の夕飯を用意した後だったから、今日は隣の家に行くことはない。

 行くのは明日の早朝、瑠美夏の朝食とお昼に食べるお弁当を作る時だ。

 そうだよ。きっとさっきのは夢だ。

 今日はぐっすり寝てしまえば、明日には何事も無く日常がやってくるはず。

 そうだ。いつもの様に大好きな瑠美夏の為に、瑠美夏の身の回りのお世話をする。

 瑠美夏が僕を必要としてくれると感じる幸せな時間。それが明日の朝には戻ってくるんだ。

 僕は半ば現実逃避するように、ここ二、三日の瑠美夏との家や学校でのやり取りを思い出すのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る