病床
背骨が痛む。種々の不調から床を離れられず随分経った。痩せてしまった体はどこが触れても痛みを覚え、鼻奥は乾燥して時々出血がある。庭では鳥が鳴いている。春でしょうから、枝々を飛び回って羽を震わせているのでしょう。 畦道も小花で溢れるように色をつけています。学校の帰り道で、子どもらが野いちごを摘んで喜んでいるようです。姿勢を変えようとしたら、擦れた皮膚が裂ける音がした。水を飲もうにもままならない。このまま乾涸びてもいい。ただ、庭にある池や小川からは、あの水音が聞こえます。うちには昔から麦魚や鮒がいるのです。午前の細い光のもとでは特に鱗が美しく反射します。障子に映るほどの強い光で、私はそれを眺めて時間を忘れます。全身の何処かで血が出る時だけ、私は私の内に帰るのです。ぶつっと、皮の下から血がこみ上げる小さな衝撃に、私の意識は角のある形を取り戻します。それは正しい恐ろしさで、あとは泣きながらその形が解けていくのを耐えて待ちます。誰に言われなくても、です。私は不誠実な人間に生まれたかった。
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