第4話 死と葉

俺は中学校に上がった。中学校でも、俺は成績は上位10%に上がる成績の中にいた。やろうと思えば、1位にも慣れたが、小学校で分かったのだが、変に目立ちすぎるといろいろとめんどくさいことが多くなるので、ある程度の範囲内にいた。部活動も中学では必須だったので、適当に美術部を選んだ。美術部ならば絵を描く程度でよく、ここの美術部は帰宅部にかなり近いので助かっていた。描きたいときに絵を描き、帰りたいときに帰れることが助かった。



「お帰り、蒼」母親は中学校になっても変わらず働いていた。だが、少し最近やせた感じがした。


「今日は蒼の好きな唐揚げ作ってあげたよ」


「ありがとう、母さん。でも料理くらい俺がするよ。母さんは仕事で忙しいし」


「大丈夫よ。いつも蒼に助けられてるし。たまには私も家事しないと」


そう言って母親はテーブルの上の皿に唐揚げをのせて盛り付けていた。


「そういえば、蒼。あなた最近あかりちゃんと会った?」



母親は俺の目をじっと見ながら言った。


「最近は会ってないけど」


俺が最後に水野あかりと会ったのはあの小学校での六道珍皇寺の時だけだった。



「ならよかった」



母親はそれだけ言って、また盛り付けを始めた。




その日の晩、俺は学校の宿題をしながらラジオを聞いていた。今の時代、youtubeなどの動画コンテンツが流行だったが、俺はラジオの方が好きだった。




この日も俺はラジオを聴きながら宿題をしていた。


「じゃあ蒼、お母さん行ってくるね」

母親は俺が中学校に上がった頃から夜勤もシフトに入れ始めた。

やはり日勤だけでは収入にも限界があったようだ。

母親は週に1回は夜勤に行くことになっている。今日がその日であった。俺は母親が玄関を出た後、ドアのカギを閉め、また宿題をし始めた。


時刻は22時を回っていた。さすがにこの年齢は体力があるが、そろそろ集中力が切れ始めた。俺は宿題をやめ、風呂に入ろうとしたとき、


ピンポン


とチャイムが鳴った。


ドアの穴から外を見たが、そこには誰もいなかった。


俺はドアを開けたが、やはり誰もいない。



耳の錯覚だったのか?そう思って部屋の中に入ると、中に水野あかりが立っていた。



「蒼君久しぶりだね」


その少女は確かに水野あかりだった。姿は小学校から成長したのかさらに綺麗になっていた。だが、彼女は前と違い、どこか恐ろしかった。


「蒼君、私ね。怖いの。助けてほしいの」


彼女は少しずつ俺に近寄ってきた。

「いつも誰かに見られてる気がして仕方ないの。それも人じゃないの。私はいつも誰かと話しているきがするの。なのにそれが誰だかわからないの?教えて蒼君、私は誰と話をしているの?」


彼女は震えていた。夏なのにまるで真冬の中にいるように吐息が白かった。




「・・・・・・・・・・・・あかり」


俺はドアの前に目をやるとそこには水野あかりの母親がいた。水野あかりの母親を見るのは少なくとも9年以上たっているはずだ。だが、彼女の容姿はは9年前と全く変わっていなかった。むしろ少し若返ったようにさえ見えた。


「帰るわよあかり」


水野あかりの母親は俺がまるで見えていないようだった。そして、水野あかりの手を引っ張った。



「助けて蒼君!」俺は混乱していたが、水野あかりを助けようとした。


だが、全く振りほどけなかった。ほんとにこれが女性の力なのかと思うほどだった。


水野あかりの母親が初めて俺の方を向き、俺の人差し指を握り、折った。


「っーーーーーーーーーーーーー!!!!」激痛が走った。普通なら気絶してしまうかもしれなかった。だが、前の記憶が残っているため、痛みには慣れていた。


「いい加減にしなさい」今度は中指を握りさらに折った。



「やめて!!!!!!!!」水野あかりは叫んでいた。


その声で水野あかりの母親は水野あかりの手を離した。

「なんでこんなことするの?昔のお母さんに戻ってよ!」


水野あかりは大粒の涙を流しながら訴えていた。


彼女の母親は少し後退した。そして、

「わからないの。なんでこんなことするのか?ほんとにわからないの。だけどなんだかあれから誰かに見られてる気がするの。誰かと毎日話している気がするの。だけど誰だかわからないの」そう言って彼女の母親はキッチンから包丁を取り出し、自分の首を刺した。



彼女の母親の血しぶきの中で水野あかりは悲鳴を上げていた。


俺はその光景を目の当たりにしながらどこか懐かしい光景だと思ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「グレイス知っているか。神様も性欲があるらしいぞ」

アーツはけらけら笑いながら俺にそんな話をしていた。


ここは?俺は記憶が混濁していた中で懐かしい声を聴いた。


「グレイスに変なことを教えるな!」


団長のクルツはアーツに指摘した。


「すいません。クルツ団長。ですが、グレイスがどうも眠れないらしく、少し面白い話でもと思いまして」


「それならもっとまともな話にしろ。明日からまた長い戦闘が始まるときにお前はほんとに!」そう言いながらクルツ団長は焚火の火をコーヒーを一口飲んだ。




そうか、ここは俺の前の記憶だ。


「グレイスはまだ子供だ。だが戦闘能力だけで言えば、俺たちに引けを取らない。いや、あと一年もすればこの部隊の中で一番強くなるはずだ!」


「・・・・・・そうですね。クルツ団長。グレイスは天才です。だけど、俺はこいつに真っ当に生きてほしかった」アーツは俺の目を見ながら言った。


「いや、こんな世界に生まれてほしくなかった。こんな子供に殺しをさせる世界などあってはならなかったはずだ!」その声は少し震えていた。


クルツ団長はもう一度コーヒーを一口飲み、夜空を見た。


「確かにおまえの言うとおりだ。アーツ。グレイスはには普通に生きてほしかった。いや、グレイスだけじゃない。あの時グレイスと一緒にいた孤児全員に普通に生きてほしかった。子供が、孤児が戦争に駆り出されるこの世は腐っている」


「そんな中でグレイスだけが残った。こいつには生き延びてほしい。そして、戦争が終わったら真っ当に生きてほしい」そう言って俺の頭を撫でた。


俺に家族はいなかった。俺が最初に見た光景は神が人を殺していた光景だった。

神に殺されそうなところを助けてくれたのが、クルツ団長率いるブラッド部隊だった。神殺しのプロ、最強の傭兵集団。血で染まった赤のコートが彼らの目印だった。

彼らを止めることができる人間はいなかった。


だが、そんな彼らも神相手には勝つことができなかった。


クルツ団長とアーツさんが俺に話をしてくれた次の日、アーツさんは67番目の神と戦闘をし、神に首を切られ、死亡した。アーツさんの最後は真っ赤な血しぶきが飛び散った。




























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