第132話
その後、冒険者ギルドにも顔を出した。
「あ、ノア君。帰ってたのね」
受付のドリスさんが、ちょっとやつれた顔になっていた。忙しそうだ。
「魔物が増えて来たのに、冒険者が出払ってて、このままじゃキャンプ村で大きな被害が出ちゃいそうなのよ」
「あぁ、とりあえず森の中の魔物は駆除しておきましたよ」
「え?」
なかなか信じてくれないので、裏の解体所で、影収納から死体を10個ほど出した所でストップを掛けられた。
「何体くらい倒したの?」
「ざっと50以上ですね」
「そんなに!?」
討伐の実績を記録してもらうために窓口に戻った。
「あら、いつの間にか銅級になってたのね。おめでとう、ノア君」
「ありがとうございます」
「銅級なら大丈夫ね。しばらくこの町周辺の魔物討伐をお願いできないかしら?」
「いいですよ」
ってことで、明日はこの町近辺の魔物を狩るとしよう。
家に帰ると、幼馴染のクリスタが来ていた。
「ノア、お帰り~」
「ただいま。元気だった?」
「うん。ノアも元気そうで何よりだよ」
お互いの近況報告をして、明日から魔物討伐をすると言う話になった。
「え?戦えるの、ノアが?」
「うん。銅級になったよ。ほら」
「本当だ。すごいじゃん」
クリスタが笑顔になって、自分の事のように喜んでくれた。
それから、どうやって戦っているのかの話になり、魔物を蔦で絞殺したという話をすると、クリスタの目の色が変わった。
「その毛皮買い取らせてよ!」
「お、おう。まだいっぱいあるよ」
「よ~し!傷一つない毛皮なんて貴重品なんだよ。明日工房に持って来てくれる?」
本当、皮の事になると目の色が変わるな。
夕飯時に父さんが帰ってきたが、とても疲れた顔をしていた。避難民関連で仕事が増えているようだ。
王都も奪還されたし、もうすぐ楽になるはずだよ。
翌日。
朝から町の外に出て魔物退治をした。
昨日あれだけ狩ったのに、また森の中に同じくらいの魔物が入り込んでいた。
「う~ん、これは変だな」
念のため、空から周辺の様子を探ってみる事にした。
…
どうやら、王都から逃げ出した魔物たちに追いやられて、魔物たちが森伝いにこちらに押し寄せている、ってことが分かった。
これは、途中を間引かないと、いつまでも町まで来てしまうな。
途中で森に降りて、蔦絡みの術で魔物たちを絞殺し、死体を回収する。これを王都までの間に3回行った。
影収納には千を超える死体が貯まってしまった。
魔物の死体は<解体>スキルでバラバラにして、素材と、それ以外に分ける。
そして、肉や内臓、骨などは、なるべく王都に近い方の森の中に広範囲に散らかしておいた。餌があれば、少しは足止めになるだろう、多分。
町に戻り、クリスタのいる皮革工房を訪れた。
「ノア、よくぞ来た!さぁ、こっちこっち」
腕を引かれて、倉庫に案内される。
影収納から、魔物の毛皮を取り出して積み上げてやった。
「うわっ、こんなにあるの?しかも綺麗に剥いであるし」
「うん。どうせ要らないから、全部あげるよ」
「いやいや、そう言うわけにもいかないって。親方~」
親方さんと交渉した結果、金貨5枚で売れた。「いい買い物をした」と親方さんは大笑いしていた。
「ありがとう、ノア。お礼に何か作るよ。…ブーツとかどう?」
と僕の足元を見ながら言うクリスタ。
確かにボロボロになってるな。
「うん、頼むよ」
「任せといて」
冒険者ギルドに立ち寄り、魔石や牙などを納品しておいた。
「凄い数ね。こんなに居たの?」
「王都方面を見に行って、途中を間引いておきました。これでしばらくは大丈夫だと思いますよ」
「え、そんなことまでしてくれたの!助かるわぁ、ありがとう、ノア君」
これで少しはドリスさんの気苦労が減ってくれると良いんだけど。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
それから、僕は温泉宿と実家の両方で寝泊まりする二拠点生活をしばらく続けた。
アカリさんは、毎日色んな所を訪れて、楽しそうにしている。
「フォアエリベル法国って面白いですね。いろんな種族がいて、文化も独特で、見てて楽しかったです」
温泉宿の部屋で土産話を語るアカリさんを見て、僕も思い出す。初めて故郷の町を出て王都に向かって旅をしてる時って、こんな感じだったなぁ。既に懐かしいや。
エスパーニャ商会の荷運びの仕事も、週に2回ほどある。
最近は、王都の復興事業で建材の需要が増えていて、南西大陸支店から石材とか砂とかを大量に運んでいる。
おかげで、一生遊んでも使いきれないほどのお金が口座に貯まってしまっている。
すると、エレーヌに「お金を貯め込むと経済が冷え込みます。もっと使うべきです」と諭されてしまった。
いや、でも欲しい物とか何も無いよ?
と思ってたら、ちょうどアカリさんが「飲食店を開きたいです」というので、店舗を買ったり開業資金を出したりしてお金を使う事が出来た。
これで残高が……おかしい、減った気がしないな。
すると、ナタリーさんが「箒の材料がまだ集まってないのよ。懸賞金掛けようかしら」というので、懸賞金を出してあげた。
うん、結構減ったかな。でも上の2桁が全然減らないなぁ。
アウロラから「避難民の住居を作るので出資しませんか」と勧誘が来たので、お金をだしてみた。ところで出資って何?
ようやく上の2桁が減った。
ランヴァルドさんに「ボウディマ王国が復興債を売り出すので、買いませんか」と勧められたので、買っておいた。ところで債券って何?
口座の残高が、ようやく半分くらいになった。
その通帳をエレーヌに見せて話をした。
「良い投資をしましたね。確実に儲けが出ますよ」
「ん?」
僕は知らなかった。
数年後に口座の残高が大幅に増え、それをどうやって減らそうかと頭を悩ませることになるとは…
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