第54話 目論見

~ニトレア王国沖・自動車運搬船「さざなみ」格納庫~


「そろそろ、ニトレア王国の領海に入ります。

その前に船から脱出して、中央帝国へ向かってください」

「わかったよ」

「ありがとうございます」

「いいってことよ。俺はただ、仕事を全うしているだけだ」


自動車運搬船「あさぎり」乗組員に紛れ込んだ緑の会会員が、

緑の会の工作員を小型潜水艇に乗せ、出発させる。

中央帝国の反乱分子とは、緑の会がもつ特殊なルートを使い、すでに連絡を取っていた。

そして、今まさに中央帝国へ向かう工作員たちを見送りながら、

緑の会は次なる作戦の準備を始める……。


***

~神水市・復興現場~

夜。復興の続く神水市の工事現場に、二人の男が忍び込んだ。


「あれ持ってきたか?」

「ああ」


そう言って男が取り出したのは『加原重工 整備用マスターカードキー』と書かれたカード。

これを使えば、神水市の復興作業に使われている、

搭乗型極限作業用パワードアーマーを自由に動かせてしまうのだ。


「どれを持っていく?」

「一番パワーがあるやつ。ただ、加原製な。それ以外は動かせないから」

「じゃあ……こいつかな」


そう言って、男は置かれている極限作業用パワードアーマーを指さした。

普通のパワードアーマーとは違い、

極限作業用であるため、いわゆる搭乗型である。


「じゃ、動かすわ」

「おっけ~」


一人が乗り込み、カードキーを差し込む。

すると、音声ガイダンスが流れた。


『ようこそ、操縦者サマ。バイタルチェックを行いマス……

バイタルに異常値。高血圧気味デス。健康的な食事を心がけてくだサイ』

「うるせぇな」


そう言いながら、彼はパワードアーマーを動かす。

そして、工事現場から脱出した。


***

~翌日・神水市・復興現場~


「あれ!?あれぇ!?」

「どした~?」

「パワードアーマーがない!」

「はぁ……? って、マジやん!」

「どうする?」

「盗難届出すしかないだろ」

「それもそうかぁ……めんどくせぇ……別にこのままでよくね?会社のだし」

「じゃあ、お前どうやって仕事すんだよ」

「そりゃ……手作業?」

「バカだろ、それは」

「じゃあ、軽装型使う?」

「それが一番じゃね?ちょっと危ない気もするけど……

いや被害届出すのが一番だわ。騙されるところだった」

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