第51話 神水高速
~神水市・しらゆり通り~
トラックは、高架道路の通るしらゆり通りに到着した。
「ここを右に行けば、若葉高校がありますよ」
二階堂が右方向を指さし、そう言った。
しらゆり通りには多くの被災者があるいており、
みな若葉高校やミヤハドームに向かっているようだ。
「ありがとうございます」
「いえ」
トラックは、右折して若葉高校へと向かう。
「……そう言えば、木村さんの声ってどこかで聞いたことあるんですよね」
「え!?き、気のせいでしょう」
「そうっすかねぇ……」
トラックは、瓦礫の散乱する道路を走る。
しばらくすすむと、落橋した高速道路と事故を起こした車両が道をふさいでいた。
高速道路から落下したであろう車が何台も焼け焦げていて、
落ちていない高速道路からはトラックや乗用車が飛び出し、落ちる直前で止まっている。
「なんてこった……」
「……ところで、この先通れませんよ?どうします?」
佐藤がそう聞いてくると、木村が言った。
「別のルートを探すしかないな。どこかに通行可能な道路があるはずだ」
トラックは停車し、木村たちは高速道路の落橋した箇所を見つめる。
被災者たちもその場で立ち往生しているようだ。
「高速道路の上に行ければ、一気にショートカットできるのに……」
二階堂がそうつぶやくと、佐藤がそれに答えた。
「確かにそうですけど、どうやって行くんです?」
「……落橋した部分から上に上がるとか?」
「無茶言っちゃいけませんよ」
「行ける行ける。頑張れば行けますよ」
「えぇ……?」
佐藤がトラックを動かし、落橋した高速道路へと向かう。
そして、つぶれた車を踏み台にして上にのった。
「ほら行けた、ほら行けた!」
二階堂がそう言いながら、すごくうれしそうにしている。
車は高速道路を渡り、若葉高校へと向かった。
***
~神水市・宮葉高速4号線~
「乗り捨てられた車が結構あるな……」
「そりゃ高速ですから」
その時、地面が揺れ始めた。
「また余震か」
「大丈夫ですかね……」
太田がそう言ったとき、後ろを見ていた二階堂が叫んだ。
「高速が後ろから落ちて行ってる!」
「なんだと!?」
木村がバックミラーを見ると、
先ほど渡ったばかりの高速道路がパーツごとに分かれ、
轟音を鳴らしながら落ちて行っている。
「まずい!次の出口で降りろ!」
「次は……若葉ですね」
「ちょうどいいじゃないか!」
佐藤がアクセルを踏み込み、速度を上げた。
***
~神水市・若葉通り~
そして出口に入り、一般道に出た。
高速道路は完全に崩壊し、しらゆり通りに戻れなくなる。
「さて、若葉高校に行こうか」
「冷静すぎるでしょ……」
トラックは、若葉高校に向かった。
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