第49話 災害発生2日目 一行は避難所に

~神水市・朝顔都市公園~


「ここらへんで休むか。広い場所なら、ある程度は安全だからな」


そう言って、トラックを停車させる。

そして、テントを設営した。


***

~翌日早朝・朝顔都市公園~|


「あ~、腰が痛い。テント越しとはいえ、

コンクリの上で眠るのは無理があったか」


そう言って、木村が起き上がる。

他はまだ眠っているが、二度寝する気も起きないので、外に出た。

傾いたビルの向こうに見える朝日を見ながら、公園のベンチに座る。

そして、ラジオの電源を付けた。


『みなさん、おはようございます。

本日も、当局では宮葉県南部巨大地震の情報をお送りします。

地震発生から、約13時間が立ちました。

一般的に、人間が飲まず食わずで生きられる時間は、72時間とされています。

しかし、今回の地震は前例のない規模のものであり、

いつ救助が来るかわからない状況です。どうか、冷静に行動してください。

家族を自分で探さないようにしてください。

現在、自衛隊の救助隊が住民の捜索にあたっていますが、

未だ行方不明者の名簿は完成しておりません。

また、一部では地盤沈下により孤立している地域もある模様です。

……かくいう私も、神水市在住の家族と連絡が取れません。

しかし私は信じております。必ず、彼らが生きていることを。

……おっと失礼しました。次は、歌宮区の被害状況に関する続報です。

昨夜未明、区の中心部にある歌宮駅が海に沈んだとのことです。

歌宮区は新工法によりつくられた埋立地であり、

専門家によるとこの工法に根本的な問題があったのではないか、とされています。

続いては、他地区の被害状況に関する情報です。

終寒区では火災が発生しており、これによる火災旋風の発生が予見されています。

また、大規模な避難所の設営が開始されております。

以下は、それらの避難所となっている施設です。

「ミヤハドーム」「若葉高等学校」「あじさい小学校」

「さくら自然公園」「神水市役所」「神水駅」

繰り返します。

「ミヤハドーム」「若葉高等学校」「あじさい小学校」

「さくら自然公園」「神水市役所」「神水駅」以上となります』

「……やっぱ、災害の規模がでかいな……」


ラジオを切り、空を見上げる。


「避難所、かぁ……」


彼女はそう呟いた。

***


「で、今日はどこへ行くんです?」


起きてきた太田が、木村に言う。


「今日は、避難所に行こうと思う」

「避難所……ですか?」


佐藤がそう言って首を傾げた。

物資は十分あるので、わざわざ避難所に向かう必要はないだろう。


「ちょっと考えてみろよ。海上自衛隊の迷彩服を着て、

自衛隊の車両に乗って市内を回っている集団が、

被災者をろくに助けずに、自分の用事を優先しているんだ。

いろいろと問題になりそうだろ?」

「確かに」

「幸い、物資は大量にある。それなら、助けられる人は助けるべきだろ。

今、陸上自衛隊による援護は遅れているらしいし……

それに、何か表彰とかされるかもしれないだろ?」

「絶対それ目当てでしょ」


結局、彼女らはミヤハドームへ向かうことになった。

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