第48話 沈みゆく沿岸部と滝山区

~神水市・歌浜区・県道23号線~


「やっと陸地に着いたな」

「そうですねぇ」


そんなことを言いながら、

木村たちは上陸艇に乗せたトラックで、

海に沈みこむ道路に上陸した。


「よし、れっつごー」


アクセルを踏み込み、トラックを発進させる。

地震によりガタガタになった道を、北に向かって走り出した。


「うわっ!また揺れ始めましたね……」


走っている途中、余震が発生。

轟音を鳴らし、走って来た道が崩落。

そのまま、海に沈んでいった。


「着々と崩壊が進んでるな……ここらへんは埋立地だからか?」


歌浜駅の外壁に取り付けられた看板が、地震のせいか傾いている。

しかしそのおかげで、読みやすくなっていた。

そこには『神水市避難場所』と書かれているが、周りに人はいない。


「もうみんな避難したのかな……」

「じゃないですか?」

「……さて、行くか。ここも時期に沈む」

「ですね」


***

~神水市・国道215号線~


「大分進みましたね」

「ああ。ここらへんで場所を確認しよう」


そう言って、木村は地図を取り出した。


「ここは……滝山区だな。オフィス街の広がる地区だ」

「よく知ってますね」

「パンフレットを読んだから」

「なるほど」


周りを見ると、道路にはひびが入り、車は横転したり衝突したりしている。

ビルは傾き、中には倒壊したものもあった。

しかし人も多く、たくさんの人が歩いていた。


「ラジオ聞いてみます?」

「ああ」


佐藤が、ラジオを付けた。


『――水I.Cが倒壊したとの情報が入ってまいりました。

周囲の皆様は、注意して避難を行ってください。

滝山区では多くの建物が倒壊し、多くの被害者が出ています。

被災者の方々は、倒壊した建物に近づかないように避難を行ってください』

「結構被害がでかそうだな……さて、街中に来たし、再度目的を確認しよう。

最終目標は、通信機を修理して援助要請をすること。それはわかるな?」

「はい」

「そのために必要な部品は、これらだ」


木村はそう言って、枝を使って折れた街路樹の横に文字を書いた。

そこには、こう書かれている。


必要部品

・送信アンテナ

・アマチュア無線組み立てキット

・リチウムイオンバッテリー

・ラジオ

・サーキックボード


「無線機の部品は……街にあるはずだ。それを探す。いいな?」

「はい」

「よし、そろそろいくか」


そう言って、彼女らは進み出した。

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