第19話 強盗と策略
特異的空間転移災害から数か月。日本はクリスマスを迎えていた。
カップルが街中を練り歩き、独り身はそれに対して恨みつらみを重ねる聖夜。
しかし、それは表向きで、裏では――
『次のニュースです。神奈川県横須賀市で殺人事件が発生しました』
――血生臭い事件が多発している。
異世界人――主に教国人――が日本で犯罪を多く犯しているのだ。
列強国の民というプライドがあるのか、日本人を侮辱するものも多い。
中には殺人まで犯す輩もおり、日本は警察や自衛隊の人員不足に悩まされていた。
日本で何らかのイベントが行われた際は事件が爆増し、大量の異世界人が逮捕、拘留される。
なぜ増えるのかというと、クリスマスなどのイベント時は品物が安くなったり、特別製品が売られたりしてる。
それを狙って多くの観光客が来るのだ。
『次は今日のスポーツのコーナーです。サッカー日本代表対トレイ代表の結果をお伝えいたします』
異世界との文化交流も進んで、特にサッカーは日本発のスポーツとして、極東文明圏で流行っている。
まあ、転移前からやっている日本人選手の方が、実力は上なのだが。
「ただいま~」
そう言って木村が扉を開く。
非番を取り、久しぶりに家へ帰ってきたのだ。
『次は天気予報です』
「あれ?なんでテレビついてんだろ」
暗い部屋に、ただテレビの音声だけが流れている。
「まあいいや。電気、電気と」
スイッチを手探りで探し、部屋の電気をつける。
夕食を食べる気力もないのかそのままソファに寝っ転がり、ザッピングを始める。
「あー……」
ぼーっとした目つきで画面を見つめ、チャンネルを変えていく。
時刻は午前2時。テレビもその多くが放送終了時刻を迎え、つまらない深夜番組ばかり。
それでも見続けるのは、単に眠気がないからだ。
「……」
彼女は何かを思いついたようにテレビを消すと、外に出た。
そしてやって来たのは、コンビニエンスストア。
無心でものをかごに放り込んでいく。栄養バランスやカロリーなんか関係なしに。
カップ麺やおにぎり、弁当にポテトサラダなど。
そろそろ会計しようかという時、銃声が響いた。
「全員動くな!お前、レジの金を全部出せ!」
男が店員を人質に取っている。
強盗だ。
男は拳銃を手にしており、店内には緊張が走った。
その時、棚の近くにいた客が撃たれた。スマホで警察に連絡しようとしていたのだ。
木村は考える。どうやら私は犯人の死角にいるようだ、と。
なぜなら、彼女がいるのはコンビニの奥にある雑貨品コーナー。
レジから見えにくく、防犯カメラもないのだ。
さてどうしようか――そう考えながら、彼女は棚に隠れる。
強盗は彼女の存在に気づいていないようだったが、このままここに居続ければいずれバレてしまうだろう。
そうなると面倒なことになってしまう。
あいつの武器、フリントノック式かな?――彼女は強盗の手もとを見ながら、そう考えた。
強盗が持っているのは大航海時代に使われていたような拳銃で、現代の物とは天と地ほどの差がある。
だが、それでも丸腰の人間には危険なものだ。飛び込むのは危険すぎる。
「お前!早く金を出せ!」
強盗は銃を店員に押し付けながらそう言った。
その瞬間、彼女は飛び出した。
「おい待――」
木村は銃を奪い取ると同時に蹴り飛ばし、倒れこんだ強盗を組み伏せる。
そして奪った銃を構え、男の顔に向けた。
「店員さん、警察に電話を」
「は、はい」
店員はすぐに電話をかけ始める。
その間、木村は男の顔をじっと見つめていた。
「な、なんだてめえ……!」
男は怯えた様子で叫ぶ。
「別に。ただの非番自衛官だよ」
その時、警官隊が突入してきた。
***
~トレイ教国・第三王子の部屋~
ここは第三王子キマイ・スタルの部屋。
キマイは現在の王とは違い、日本のことを認めず、ただの蛮族としか考えていない。
そのため日本と教国・の関係を悪くし、戦争を起こそうとしている。
「日本に派遣したあいつはどうなった?」
「警察に捕まったようです」
「そうか……どんどん送り込め」
「ハッ!」
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