第3話 とある愛猫家たち

「暇だな~」

ここは東京のとあるマンション。

一人の女性がスマホの画面を眺めながらベッドでゴロゴロしていた。

彼女の名前は佐々木楓。とある外資系企業に勤めていたが、転移時の混乱で解雇された。

何か悪いことをしたわけではない。それどころか優秀な成績をおさめていた。

だが、部下が無能だったので一緒に解雇されたのだ。

「就職しようにも不景気だし……どこの会社も人材募集してない……してるのは自衛隊くらい」

彼女はスマホに映る『陸・海・空自衛官募集!』という文字を見ながらつぶやいた。

普通の不景気なら零細企業などは人材募集をしていることも多いが、転移によって零細、中小の多くがつぶれた。

そのため、今は再就職が難しいのだ。

「自衛隊は嫌だしなぁ……私勉強ばっかりで運動してなかったし」

彼女は自衛隊に入る気はなかった。むしろ、入りたくない部類に入っていた。

「いや、自衛隊が嫌いな訳じゃないけど、むしろ尊敬してるけど、入りたくはない」

佐々木は誰かに釈明するようにつぶやくが、この家には彼女しかいないので意味はない。

「まあいいや。ルミ~おいで~」

そう言った彼女の上にルミとなずけられた猫が飛び乗る。

「よしよーし。お前可愛いなぁ」

彼女がそう言いながら猫をなでていると、スマホにチャットアプリの通知が来た。

「お、愛猫家グループからメッセージだ」

佐々木はネット上で知り合った愛猫家たちと作ったグループにメッセージが送られてきていることに気が付いた。


<ai> 速報速報!キャットフードがなくなるんだって!


<aikokusya> マジ!?


<syo> あ~なんかテレビでやってた気がする。確か、配給制になるって言ってた。


<ai> そうみたい。でも、私は毎日あげてる。だって、ネットで取り寄せれば届くし。


<syo> ネット通販も時期に止まるんだって。貯蔵しとかないとまずいかも。


<kae> ほんとに!?うち、もう一袋しかないんだけど。


<aikokusya> マジだわ……農林水産省のHP見てみ?


<sasaki> ほんとだ……人間の食事が優先的に配給されるらしい。


<syo> ちょっと買ってくるわ。


syoがログアウトしました。


「私も買いに行くか……」

そう呟き、佐々木は一言書き込んだ後、ログアウトボタンを押した。


<kae> 私も買ってくる


kaeがログアウトしました。

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