第4話 接触

~ユメミ半島上空~

アルケテル王国の空軍に所属する女性、ミシャは愛騎に乗って空を警備していた。

魔力が全くないため、使い物にならない土地であるユメミ半島。

その上空は、言っちゃえば左遷先である。

そこを飛んでいる彼女は……言わなくてもわかるだろう。だが、彼女の仕事は決して無駄ではなかった。

なぜなら……

「な、なんだ!?」

直後、空気を叩くような音を鳴らしながら巨大な翼竜が飛んできた。

灰色で、見た事もない形の翼竜。羽根をはばたかせず、しかし高速で飛んでいる。

ミシャはその異様な光景に呆気に取られていた。

とても生物とは思えないソレは何度か周回すると、もと来た方向に戻って行った。

「なんだったんだ?」

***

アルケテル王国の王城。

空軍から入った報告に、大騒ぎになっていた。

「いったい何なんだアレは!」

「まさか、エレゲンツ帝国の新兵器!?」

「そんな馬鹿な!」

「じゃあなんだ!?」

「わからない……」

その時、一人の兵士が駆け込んできた。

「沖にニホン国の使者を名乗る巨大船が!」

「ニホン国?聞いたことが無いな……」

「とにかく、行ってみよう」

こうして、日本と異世界の国、アルケテル王国が接触した。

***

会談の結果、日本はアルケテル王国から食糧を輸入するほか、

ユメミ半島がどこの国にも所属していないことを知り、日本は領有権を主張。

王国が許可したことで、ユメミ半島改め夢見半島を手に入れた。

王国側は『魔力がない土地で何をするんだ?』という顔だったが。

日本の調査の結果、夢見半島には多くの石油が埋まっていることが分かった。

こうして、日本を襲った未曽有の危機は何とか収まったのだった……

夢見半島には日本から輸出される珍しい製品を目的とした各地の商会が集まり、街が形成されていった。

日本はこの街を東京都、夢見市とした。夢見市は瞬く間に発展。

異世界人、主に亜人と呼ばれる者たちが多く移住してきたのだった……

***

~夢見半島・夢見市~

「ドロボー!」

異世界人の泥棒が大通りを走る。

道行く人が取り押さえようとするが、泥棒は女性を人質にしたため、近づけなかった。

「誰か警察呼んでくれー!」

「キャァアアー!!」

「うるせぇ!静かにしろ!お前ら、こいつが殺されたくなければ、金と馬車をよこせ!」

その時、声が響いた。

『Lv2犯罪行為、窃盗および人質強要罪、発生を確認』

泥棒が振り返ると、そこには人型のナニカがいた。

頭にパトランプがついていて、胸に『警視庁』と書かれている。

「なんだてめえ!」

『警告します。あなたはLv2犯罪行為をしました。現行犯逮捕します』

泥棒は人型のナニカに殴りかかるが、簡単に取り押さえられる。

そして、手錠をかけられた。

『ご協力ありがとうございました』

人型のナニカはそういって一礼すると、犯人を警察署に持って行った。

「なんなんだ……?あいつ……」

「お前、知らねえのか?あれはニホンの『鉄の人形兵』だよ」

「『鉄の人形兵』?」

「ああ。なんでも、あの国の最新技術らしい。人間より力があって、疲れ知らずだそうだ」

「へ~」

鉄の人形兵……正式名称、加原重工製TH型Patrol Advance。

多くの現場に使われている作業用ロボット、Advanceの警察版だ。

ちなみに自衛隊用のArmy Advanceと医療用のHospital Advanceがある。

AIで自立思考が可能であり、人と話すこともできる。

声も人間と大差ない。冗談も言える。燃料はガソリンだが、少し燃費が悪い。

また、人工知能の学習機能により、経験を積むことで成長することができるのだ。

最低価格は500万円で、高いものは1億を超える。

現在、夢見市の警備を担当しているのは3体である。

ちなみに、それぞれ「ヒマリ」「カエデ」「スミレ」という名前がある。

彼らは夢見市の住民や観光客を常に守っているため、住民からは英雄視されている。

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